昨年12月にボルソナロ大統領が裁可した汚職防止法に含まれる項目の一つの「ジュイス・ダ・ガランチア(保証判事制)」により、ラヴァ・ジャット作戦の判事の権限が従来より限られる可能性が出てくると、10日付フォーリャ紙などが報じている。
「保証判事制」は、検察からの犯罪捜査開始要請や銀行口座や通信記録の公開要請などを認め、逮捕令状などを出す判事と、検察からの起訴状を受け付け、裁判を担当する判事を別々にする、というものだ。
この制度が導入されると、「種々の裁判に際して、より客観的な立場で裁くことができる」として、評価する声もある。最高裁では、11人の判事のうち、6人がこの制度を支持しているとの報道も行われている。
だが、これで割を食う(影響を被る)ことになるのは、ラヴァ・ジャット作戦などで大掛かりな捜査を担当していた判事たちだ。
10日付フォーリャ紙は、その最たる例として、ラヴァ・ジャット作戦のリオ地区担当判事であるマルセロ・ブレッタス判事をあげている。
同判事はこれまで、セルジオ・カブラル元リオ州知事に対して捜査命令や逮捕命令を出し、裁判でも同被告に対し、合計で250年以上の実刑判決を下している。だが、新しい制度下では、捜査命令などを出せば裁判を担当できなくなり、裁判を担当するなら、捜査命令などが出せなくなる。
同判事はまた、昨年2度、テメル元大統領に対する逮捕命令を下しているが、保証判事制に従うと、この件に関する裁判を担当できなくなる。
ブレッタス判事はこれまでの捜査や裁判で世間的な好感度を上げ、ボルソナロ大統領が次期最高裁判事候補として考慮するまでになっていた。
同じくラヴァ・ジャット作戦の判事で名をあげたセルジオ・モロ法相が所属したパラナ州連邦地裁の場合は、捜査命令などの判断をルイス・ボナ判事、裁判をガブリエラ・ハルト判事が担当しており、既に新制度に対応している。
だが、この新制度は、「判事数が足りていない地裁レベル(連邦裁でも判事が1人の法廷が2割ある)で導入できるか」「あらゆる捜査で対応することが可能か」といった、いざ実行となった際の問題も抱えており、司法界では現在も難色を示す声が聞かれている。
このため、連邦検察庁が9日、国家法務審議会(CNJ)の中で新制度を施行するための具体的な準備や討議を行っているグループに、1月23日からの完全実施は不可能だから、今年いっぱいかけて施行するように求める覚書を提出した。
アウグスト・アラス検察庁長官は検事らの声を基に、「(家庭内暴力を扱う)マリア・ダ・ペーニャ法に基づく裁判や陪審裁判には新制度をあてはめないでほしい」と要請。検事たちは、既に捜査が始まっている案件は対象から外すことや、選挙関連の裁判にも保証判事制を適用するのかなどについての明確な基準作成なども求めている。