【既報関連】中国の国家電網公司が2017年にブラジルの送電配電事業大手CPFLエネルジアを傘下に収めてから3年、中国企業は再び、ブラジル企業への買収攻勢に出ようとしていると、12日付ブラジル紙が報じた。
現時点で中国企業が興味を示しているのは、排水処理事業、浄水事業、高速道路や鉄道の建設や運営といった、インフラ関連の大型事業だ。
中国企業は2017年に、エネルギー部門を中心に、総額90億ドルの投資を行った。
しかし、2018年は〃政治リスク〃により、投資が控えられた。
経済、市場の関係者たちは、一応は自由主義経済の看板を掲げるボルソナロ候補の当選を望んでいたが、労働者党のハダジ候補が当選する可能性も少なからずあった。
ボルソナロ氏は大統領候補時代、「中国にブラジルの資産が買い漁られることに反対(中国はブラジルで買物をするのではなく、ブラジルを買っている)」と発言していた。また、ボルソナロ大統領が米国トランプ大統領へ媚びるような姿勢も投資を鈍らせ、18、19年の中国からブラジルへの投資額は共に30億ドル前後だった。
多くの中国企業のブラジル国内投資をサポートする、リオの投資銀行モダルのエドゥアルド・セントーラ頭取は、「ボルソナロ大統領と習近平国家主席の関係が良好であることや、ブラジル国内で多くの公社民営化や公共施設の営業権委譲入札が計画されていることから、今年は70億ドル規模の投資が入ると期待できる」と語っている。
専門家筋からは、「中国はアフリカで行ったことをブラジルでも繰り返したいのでは」との声が聞かれる。中国はアンゴラや南アフリカ、モザンビークなどで、高速道路や鉄道の建設、水力発電事業にしっかりと食い込んでいる。こうした事業が弱く、政府にも大規模投資計画を主導する体力がないブラジルは、中国にとって格好の投資先だ。
ブラジル中国商工会議所(CCIBC)のシャルレス・タン氏は、「中国はブラジルや南米で大型投資を行う準備が出来ている」と語った。
ブラジル最大の浄水、排水処理公社であるサンパウロ州水道公社(Sabesp)にも、中国側が熱い視線を送っている。同社は2800万人にサービスを提供し、年間160億レアルの売上がある。E紙は、中国鉄建がSabesp株の取得に動いていると報じた。
現在は、サンパウロ州政府がSabesp株の50・3%を保有しており、その評価額は400億レだ。サンパウロ州政府は、持ち株の全てを売却するか、持ち株の半分の引き受け手を探す方針だ。
また、中国企業とブラジルの橋渡しをしてきたL.O.バチスタ法律事務所の共同経営者で弁護士のルイス・エドゥアルド・ヴィダル・ロドリゲス氏は、「中国は既にブラジルの電力事業に食い込んでいるので、次のターゲットは天然ガス事業では」とも語っている。