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(アカデミー賞)「消えゆく民主主義」がドキュメンタリー部門にノミネート ジウマ罷免、ルーラ実刑の内幕描き物議も

「消えゆく民主主義」のネットフリックス・ブラジルでの紹介画面

「消えゆく民主主義」のネットフリックス・ブラジルでの紹介画面

 13日、米国ロサンゼルスで世界最大の映画賞、アカデミー賞のノミネート作品が発表され、ブラジルの左派・労働者党政権崩壊の内幕を描いて話題を呼んだドキュメンタリー「ブラジル 消えゆく民主主義」がノミネートされた。

 このドキュメンタリーは、現在36歳の女性監督、ペトラ・コスタが手がけたもので、2013年のサッカーのコンフェデ杯にはじまる労働者党政権に対する民衆デモにはじまり、14年大統領選でのジウマ氏と対立候補アエシオ・ネーヴェス氏との接戦選挙での遺恨、同年からはじまったラヴァ・ジャット作戦、16年のジウマ大統領罷免、18年のルーラ元大統領の収賄罪による刑執行、ボルソナロ極右政権の誕生までを描いたものだ。

 コスタ監督の両親は軍政時代の学生運動家だったため、同様の人が支持する労働者党寄りの視点であることを前もって示しながらも、「ブラジル政権で伝統的に続けられてきたゼネコンとの汚職(監督は同系企業の一家の出身でもある)の責任を労働者党政権だけが急に取らされた」ことや「大統領罷免のプロセスの不可解さ」などを理由として、ジウマ氏罷免がマスコミと財界が仕組んだクーデターだったとの説を展開した。

 また、18年の大統領選で、世論調査で圧倒的な1位だったルーラ元大統領に有罪判決を与えたセルジオ・モロ判事が、選挙後に、同年の大統領選で当選した極右候補のボルソナロ氏の法相に就任したところまでを本作は描いている。

 このドキュメンタリーは6月にネットフリックスで、日本も含め、国際的に公開されたが、ちょうどそのときはブラジル国内で、判事時代のモロ氏や検察官たちが交わした携帯アプリの通話記録の漏洩報道がスキャンダルとなっていた時期と重なった。

 通話記録の漏洩報道では、モロ氏が判事時代、憲法違反である、検察との協力体勢をとっていた疑惑や、特定の政治傾向の選り好み、ルーラ氏の裁判で自身も確証が持てない部分があったにも関わらず、判決を下した疑惑などが暴露された。

 これが相乗効果となってブラジルの政変は国際的に話題となり、11月のルーラ氏釈放の遠因ともなった。

 ブラジルは現在も、ボルソナロ氏を中心とした極右支持の国民と、左派系の国民との二極化が進んだ状態で、今回のオスカー・ノミネートも国内での評価を大きく2分している。アエシオ氏の所属する民主社会党の関係者や、ジウマ氏罷免のデモ運動を展開した政治団体「ブラジル自由運動」などは、「デタラメな作り話だ」などと抗議の声明も出している。

 また、今回のアカデミー賞では、ブラジル人監督のフェルナンド・メイレレス氏が手がけた映画「2人のローマ教皇」も、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞の3部門でノミネートを受けるなど、ブラジル映画界にとって非常に大きな1年となった。

 授賞式は2月8日に行われる。(13日付G1サイト、UOLサイト、エスタード紙電子版などより)