ブラジル中西部のマット・グロッソ・ド・スル州ポンタ・ポラン市で国境を接するパラグアイのペドロ・ファン・カバジェロ市の刑務所で、現地時間19日未明に、サンパウロ州を本拠とするブラジルの大型犯罪組織州都第一コマンド(PCC)の構成員75人が地下トンネルから脱走した。19、20日付ブラジル各紙・サイトが報じている。
パラグアイ法務省が発表した逃亡者名簿によると、75人中40人はブラジル人で、その中には、刑務所内PCCリーダーのチモテオ・フェレイラの名や、ブラジル連邦刑務所で服役中の有力な麻薬密売人〃ミノタウロ〃ことセルジオ・キンチリアーノ・ネットとの関係が疑われる殺し屋6人の名も含まれていた。
また、パラグアイ内務相エウクリデス・アセヴェード氏は、「何人かはブラジルに逃げ込んだ可能性がある」と語った。
パラグアイ検察が公開した刑務所内の監視カメラには、午前4時頃から大きな動きがあったことが記録されていた。検察は、「これほどの動きがあったのに、現場の看守が全く動かなかったのは酷い」としている。
外部へのトンネルが掘られた棟には、1階と2階に分けて囚人が収容されていた。2階から1階に下りるには扉を通過しなくてはならない。
扉の鍵は常に施錠されているはずだが、収容者たちは何の問題もなく、扉を通って脱獄。だが、事件後に検察が現場に到着した時は鍵がかかっていた。その事実から、看守側に内通者がいて、鍵をわざと外しておいたのではと検察は疑っている。
また、脱走犯の一部は刑務所の正門から脱出したとも言われている。これも看守の内通を疑わせる一要因だ。
パラグアイ紙によると、同国法務省は同国検察に、PCC構成員側から刑務職員に対して合計8万ドルの贈賄があったと報告した。
セシリア・ペレス法相はラジオ局に、「脱走計画は一朝一夕のものではない。『刑務所管理当局が完全に欺かれ、脱走を感知できなかった』はずはない。明らかに管理当局側の一部と犯罪者たちが結託していた」と語った。刑務所職員30人と地区管理者1人は脱走に手を貸した疑いで逮捕された。
また、マット・グロッソ・ド・スル州法務治安局は19日、パラグアイ当局と情報を共有していると発表。国境地帯最大都市のポンタ・ポラン市とドウラード市の警備は強化されている。20日午前中にはブラジル人逃亡者1人が再逮捕された。
ブラジルのセルジオ・モロ法相も、連邦政府がパラグアイと国境を接する各州と協力し、逃亡者のブラジル入国を阻止していると語った。ブラジルの法務省と検察は19日午後4時、マット・グロッソ・ド・スル州とパラグアイの間の国境閉鎖を発表したが、数時間後には方針を変え、検問強化に止めた。マット・グロッソ・ド・スル州とパラグアイの国境は500kmに及ぶ。