ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》大統領の「燃料税金ゼロ」発言で波紋 州にICMS引下圧力 知事たちは揃って猛反発 燃料税への依存度高い州財政

《ブラジル》大統領の「燃料税金ゼロ」発言で波紋 州にICMS引下圧力 知事たちは揃って猛反発 燃料税への依存度高い州財政

5日のボルソナロ大統領(Wilson Dias/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領が5日に「州政府が燃料に対する税金をゼロにするなら、連邦政府も燃料への税金をゼロにする」と語った件に関して、州知事たちが一様に不快感を示したと、6日付現地紙が報じている。

  問題の発言は、ボルソナロ大統領が5日に大統領官邸で行ったものだ。大統領はこの時、「もし州が燃料に対する商品流通サービス税(ICMS)をゼロにするなら、連邦税をゼロにする。今は財政的にとても困難だが、ICMSをゼロにするなら、燃料に課税するPIS(社会統合基金)とCofins(社会保険融資納付金)をゼロにしよう」と語っている。

 この発言に対し、州政府関係者が悪印象を抱いている。サンパウロ州のジョアン・ドリア知事は、大統領の提案は「無責任なもの」と言い捨てた。「もし大統領が知事たちを集め、可能性も含めてざっくばらんに話すのなら話し合いにも応じるだろう。だが、ICMS減額などは州が決めるものであり、そこに(国民の関心が強い)燃料の話を持ち出すというのは、いかにもポピュリスト的だ」と言って批判した。

 リオ州のルイス・クラウジオ・カルヴァーリョ財務局長は、「燃料のICMSは50億レアル分ある。我が州ではそれを教育関係の財源にあてている」と反論した。

 また、ミナス・ジェライス州のロメウ・ゼマ知事も、「減税そのものには賛成だが、345億レアルもの赤字を抱えた状態で州政を託された者としては、燃料関連のICMSを無条件で手放すわけにはいかない」と大統領を批判した。

 また、マラニョン州のフラヴィオ・ジノ、南麻州のレイナウド・アザンブジャ、エスピリトサント州のレナト・カーザグランデ、リオ・グランデ・ド・スル州のエドゥアルド・レイテらの各州知事も各々、「州との事前の話し合いが行われないまま、一方的に発せられた」「実現させたいなら資金援助が必要だ」「実情と乖離している」など、大統領の発言に不快感を示す声明を出している。

 この背景には、ボルソナロ大統領が先週、「ペトロブラスが価格を下げたのに燃料の価値が下がらないのは州の責任だ」と批判したことがある。

 さらに大統領は、経済省に対し、ICMSの徴税方法を変える(税率を下げる)よう頼んだが、却下されている。

 州によっては、ICMSを下げることを検討しているところもある。だが、その場合、何を代替の収入源にするのかの話し合いは必要となる。ICMSは、州民へのサービスのための主要財源として憲法でも認められており、徴収額の25%は市の財政に繰り込むことが定められている。

 また、州財政における燃料からのICMSの比率は相対的に高い。州税に占める比率が10%を切っているのはサンパウロ州など4州のみで、マラニョン州やトカンチンス州では30%以上を占めている。