福島県庁が中南米・北米の移住者子弟を招聘する「令和元年度中南米・北米移住者子弟受入研修」に参加した、ブラジル福島県人会青年部2人の帰国報告会が、2月16日午後にサンパウロ市の同県人会会館で行われた。会員を中心とした、野口泰在サンパウロ日本国総領事や各日系団体の代表者等の出席者41人に、母県の復興状況や郷土の歴史、文化体験など研修で学んだ成果を発表した。
今井由美マリナ会長は、移住者子弟9人が1月22日~31日まで母県で研修を行ったとの概要説明をし、福島県が日本の総務省から採択を受けた「中南米日系社会と国内自治体との連携促進事業」も同時に実施されていると付け加えた。
野口総領事は「着任して間もない17年10月に内堀県知事がジャパン・ハウスで復興セミナーを行った」と振り返る。「福島県人会の活動は活発。これからも伝統文化と復興の歩みをブラジルへ伝えてほしい」と今後の活動への期待を述べた。
来賓のブラジル日本文化福祉協会の小原彰理事、ブラジル日本都道府県人会連合会の山田康夫会長も復興のへ道を着実に歩む福島県へエールを送った。
研修生の佐藤レヴィさん(32、三世)と村上アガタ・サユリさん(22、五世)は、各施設で視察した内容をパワーポイントにまとめ、交互に発表した。
アガタさんは「県農業総合センターでは全ての食材を検査し、安全な食材を提供している」と県の取組が素晴らしいと敬意を込めて報告した。
レヴィさんも、相馬市伝承鎮魂祈念館で語り部から悲惨な体験談を聞いたことや、楢葉遠隔技術開発センターで廃炉推進のために仮想現実システムなどの最新技術開発を行っていたと説明。
さらに、アガタさんは海外移住資料館で笠戸丸移民の乗船名簿で高祖父の名前を見つけたこと、レヴィさんは遠縁の親戚に日本で初めて出会ったことを語り、「日本へのルーツ意識が高まった」と喜びの報告を行った。2人は「何より研修で自分たちを気遣い『おもてなし』の心を見せてくれた県庁の皆さんに感謝しています。ありがとうございました」と発表を締めくくった。
発表を聞いた、埼玉県人会の吉田章則会長は「日本食品輸入の仕事をしていたが、ブラジルは放射能検査が厳しい。一旦悪くなったイメージを戻すのは大変なので、このような取組は良いこと」と頷いていた。
同県人会青年部の渡辺ユミ・フェルナンダさん(24、三世)は、「私は福島県は大丈夫だと知っているが、多くのブラジル人は危険だと思っている。東京五輪の聖火リレーのスタートが福島県だと聞き、『ここは大丈夫』だということが皆に伝わると思った」と笑顔を見せた。
□関連コラム□大耳小耳
福島県人会が16日に行った移住者子弟受入研修の帰国報告会では、長崎県人会の川添博会長から、日本の総務省の「中南米日系社会と国内自治体との連携促進事業」に福島県が選ばれた理由について質問が出た。これは総務省が日系社会の人材育成・交流促進を目的としたもので、県庁が応募して総務省から承認されれば利用できる制度だ。昨年は山口県人会や岐阜県人会、一昨年は島根県人会がこの制度を利用し、様々な活動を実施している。自分の県でも実施できるように、県庁に相談してみては?