「韓国のカルチャーが世界的に熱い」。それはだいぶ以前から言われていたことだが、その印象は9日、アカデミー賞で同国の映画「パラサイト」が、史上初の「英語以外での外国映画で初の作品賞」という快挙を成し遂げて以降、さらに強くなっている。
思い返せばそれだけではない。今やツイッターを見ていても、ブラジル内のトレンド・ランキングにも、読めないハングル文字がしばしば入っている。何かと思って調べれば、それはBTSやEXO、ブラックピンクといったKポップのアイドル・グループに関してのものだ。今や地下鉄の駅のバンカで売られているアイドル雑誌も韓国のアイドルだらけだ。
「一体、なぜこういうことになったのか」。この2週間ほど、コラム子はその理由をネット検索で調べ続けていたのだが、そうしていくうちにブラジルと韓国の意外なまでに多い共通点を見出すことができた。
まずひとつは、「軍事政権を経験した時期が近い」こと。60年代にはブラジルがキューバ、韓国が北朝鮮に近いことから共産国家化を恐れての軍事独裁国家が当時の米国の後押しで築かれたものだが、ブラジルが1964~85年、韓国が1961~88年とかなり近い。
二つ目は、「右翼と左翼の対立が激しい」こと。ブラジルでは、「軍事政権を打破した民主化を尊ぶ人たち」と、「それでも左翼は嫌いで軍事政権にもそこまで悪印象がない」という人の二手に分かれがちだが、それは韓国も同様。左派タイプの人はルーラ大統領の政権を好むし、韓国の人は金大中氏や盧武鉉氏といった、現与党の「共に民主党」の系譜の政治家を好む。一方、右派だと、ブラジルでは「軍政時代は大きな経済成長を成し遂げた」と語り、軍政が終わって30数年後に元軍人のボルソナロ氏を大統領に選んだ。
韓国でも、クーデターで軍事政権を握った朴正熙大統領の独裁政権を「大きな経済成長を遂げた」として評価し、同氏の娘の朴槿恵氏も2010年代に大統領に選ばれた。
三つ目は、90年代の終わり頃に「通貨危機」があったこと。ブラジルでは99年にレアルの危機が起こり、デフォルト寸前まで行った。韓国でも1997年に、アジア全域を襲った「アジア通貨危機」が起こった。
こうして見ると、60年代以降、ブラジルと韓国が似た歴史をたどっていることが少しおわかりいただけるのではないかと思うが、では今度は「何が両国の差をつけたか」について語ることにしよう。
一つ決定的に違ったのは、90年代終盤に韓国が金大中氏が大統領に就いたときの戦略だろう。まず同氏は、アジア通貨危機の打破をIT産業にかけ、力を注いだが、それが、サムスンやLGといった企業を世界的存在にまで押し上げる原動力になった。ブラジルは今も一次産品中心の貿易だ。
そしてもうひとつが、音楽や映画といった産業の政府の保護だ。これは1995年に金泳三大統領が映画産業の保護を行なったことにはじまり、金大中政権の時代に文化産業振興基本法が制定され、01年に韓国文化コンテンツ振興院が設立された。そこに「競争相手の少ないものを海外戦略させよう」という「ブルー・オーシャン戦略」を、SMエンターテイメントなどの韓国の芸能事務所が、サムスンなどの企業の協賛などの形を借りる形で進めた。その基本形ができたのが、「第一次韓流ブーム」が生まれた盧武鉉政権のときだった。
ブラジルでも2000年代のルーラ政権時には好景気だったが、映画でこそ「シティ・オブ・ゴッド」のような世界的ヒットはあったが、音楽はセルタネージャにファンキと、むしろ以前よりもブラジルだけの市場に向いていったのは悔やまれるところだったか。(陽)