「ついに会える」。26日午後、そんな緊張の面持ちの佐藤レヴィさんがホテルのロビーに入ってきた。
待つこと数分、地元福島市在住の真田順さん(83)が妻と息子で福島市議会議員の広志さん(49、福島県)を伴い、待ち合わせ場所に到着。席に座るやいなや、資料を取り出し勢いよく話し始めた。
「あなたの曽祖父・儀右衛門(ぎうえもん)がブラジルに移住したんだね」。矍鑠(かくしゃく)とした様子でレヴィさんに確認を促す。
順さんの父の従兄弟である真田儀右衛門は、ブラジル移住前に養子に入り、姓は佐藤となった。それがレヴィさんの曽祖父だ。
「はい、そうです」というレヴィさんの日本語の返事を聞くと、順さんは「じゃあ親戚で間違いないね」と頷く。ようやく会えた親戚に、レヴィさんは笑顔で応えた。
儀右衛門の兄もブラジルへ移住し、子孫はパラナ州に住む。レヴィさんら佐藤儀右衛門の子孫はサンパウロ州に住んでいるが、両者の交流は現在も続いており、1年に1度大きなパーティーを行うという。
その時の写真は、レヴィさんの父が順さんに送った手紙に同封されており、「ブラジルで30~50人も集まっている写真を見た。凄いね」と驚いていた。
英語が流暢なレヴィさんは通訳を通して、祖父や父親から聞いた先祖の歴史や家系図等の資料について次々に質問し、順さんはできる限り答えた。約1時間後、最後は別れを惜しみつつも、順さんと息子の広志さんのそれぞれと固く握手し、今後も連絡を取り合うことを約束した。
レヴィさんは「念願の親戚に会うことができて感激した」と興奮気味に語り、「また日本を訪れて自分のルーツを調べたい」と今後への思いを語った。
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27日の朝、昨年5月から福島県に滞在している、ブラジルのサンパウロ市からの県費留学生、福本カレン理恵さんと合流した。ここからは彼女も一緒に3日間研修先を回る。
2泊3日のホームステイを終えた一行は、日本語を話す回数が増えるなどの変化が生じていた。バスの中から見える美しい景色を堪能していると、相馬郡新地町の新地エネルギーセンターに到着した。
一行を出迎えてくれたのは、新地スマートエナジー株式会社の小坂卓也主幹と新地町企画振興課の黒沢知子主任主査兼環境未来まちづくり振興係長だ。
宮城県との県境で浜通りの最北端に位置する新地町は、東日本大震災で10メートルを超す巨大津波に襲われた。その際に電気が途絶えてしまったことを教訓に、自律的で災害に強い持続可能なまちづくりを目指すこととなり、18年に新地エネルギーセンターが設立されることになった。
事業の運営は、新地町を含めた12法人・団体が共同で設立した、新地スマートエナジー株式会社が担っている。
ここでは、相馬港の液化天然ガス基地のパイプラインから分岐した天然ガスを利用して熱と電気を製造し、環境に優しい地産地消エネルギーをJR新地駅周辺の施設に供給している。
センターの電気室には、50kWhの蓄電池が設置された。これは過剰な電力利用を抑え、災害時には他の電源と組み合わせた自立運転に貢献する。
「今の発電で足りるのか?」という疑問の声に、「始まったばかりで、どの程度エネルギーが必要か情報を集める必要がある」と小坂主幹は述べる。成功すれば、他の地方へのモデルケースにもなる。
ペルーから参加した研修生のイワサキ・オスカル・ヒデキさん(19、四世)は、「日本のテクノロジーは凄い」と呟き、興味深そうに施設に置かれた資料を眺めていた。(つづく、有馬亜季子記者)
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