ブラジル映画界で長年にわたって根強い評価を受けてきたホラー映画のカリスマ監督、ジョゼ・モジカ・マリンズ(通称ゼー・ド・カイション)が19日、入院中の病院で亡くなった。83歳だった。
ゼーは1936年、サンパウロ市で生まれた。スペイン系移民の子どもで、芸術家の一派である両親の影響を受けて育った。
ゼーは幼い頃から映画に興味を持ち、17歳の時には、映画を作るための会社まで興した。
ゼーは生涯に50本ほどの監督作を残したが、最も知られているのが、自らが主演を務めたB級ホラー映画「ゼー・ド・カイション(棺桶のゼー)」だ。この作品はシリーズもので、主人公のイメージから、彼自身がゼー・ド・カイションと呼ばれるようになった。英語圏でも同様に、「コフィン・ジョー」の名で広く知られた。
最高傑作の誉れが高いのは、1964年に発表した「午前零時にお前の魂を連れ去る」で、他にも「今夜、おまえの死体を変えてやる」(1967年)「棺桶ゼーの奇妙な世界」(68年)などが代表作として知られている。
黒いマントにシルクハットをかぶり、爪を長く伸ばしてホラー映画の主人公を演じた彼は、普段もその役になりきっていた。また、1960年代末に起きた、ブラジルにおけるカルト映画のムーヴメント「シネマ・マルジナル」の代表的監督にも数えられた。
ゼーの作品はホラーに限らず、西部劇や冒険劇なども手がけてはいる。
だがゼーのイメージと言えばやはりホラーで、90年代にはバンデイランテス局で、ホラー映画の番組「シネ・トラッシュ」の司会を務めた。
2008年に「悪魔の化身」で久々のヒットを飛ばし、再度評価が高まったが、2014年に心臓発作を起こしてからは人前に姿を現さなくなっていた。
今年の1月に気管支肺炎をこじらせ、28日からサンパウロ市内のサンクタ・マジオーレ病院に入院していた。
ゼーの告別式は一般公開の形で、20日にサンパウロ市のサンパウロ映像博物館(MIS)で行われた。遺体は21日正午にサンパウロ墓地に埋葬される。(19日付G1サイトなどより)