ボルソナロ大統領とパウロ・ゲデス経済相の間に微妙な隙間風が吹き始めており、ボルソナロ大統領は経済相に今年は2%以上の国内総生産(GDP)成長達成を求めていると、21日付地元紙が報じた。
隙間風の原因は、3月初旬に発表される昨年のGDP成長率が、当初の見込みより低い数値が出ることが濃厚なことだ。
ボルソナロ大統領は、「自分には経済のことは分からない」とゲデス氏に経済問題を丸投げした経緯がある。それでも、経済問題に全く口を挟まない訳ではなかった。経済的な課題に関して、ボルソナロ大統領が口を滑らせ、ゲデス経済相が翌日打ち消す。またはその逆に、ゲデス経済相が発言し、ボルソナロ大統領がそれを打ち消すこともしばしばだ。
ボルソナロ大統領は、社会保障制度改革など、自分が完全には納得していないことでも、「ゲデスが言うなら」と実行してきたのに、GDP成長率が低いままでは、ゲデス氏に任せた意味がないと感じているのではないか、と地元メディアは見ている。
大統領に近い筋によると、ボルソナロ大統領はゲデス経済相に、「今年はGDP2%成長だぞ」と念を押し、経済相はそれに同意、2%以上は可能と答えたという。
また、「公務員は寄生虫」発言と、「家政婦がディズニーランドに行けた時代が異常だった」発言でゲデス経済相が批判を浴び、行政改革の進行を自分で妨げている事も大統領の苛立ちの理由の一つだ。
大統領関係者は、ゲデス経済相に公の場で謝罪するように求めた。経済相は最初はこれを断ったが、結局、20日になって、「もし、誰かを怒らせ、傷つけたのなら謝りたい」と形ばかりの謝罪を行った。
地元紙によると、脆弱な経済指標が今年も続くと、企業家、投資家たちが政権を見限り、2022年の大統領選挙で別の候補者に鞍替えするのではないかと、大統領は心配している。地元紙はそうなった場合の候補者として、サンパウロ州のジョアン・ドリア知事(民主社会党・PSDB)やTV司会者のルシアノ・フッキ氏の可能性を指摘する。
ボルソナロ大統領は、マイナスでこそないものの煮え切らない経済成長のペース、今も2桁を超える失業率などが、22年大統領選はおろか、今年の統一地方選でも反対勢力につつかれる要因となることも恐れている。
ボルソナロ大統領は18日にゲデス経済相に関し、「彼にも少しばかり問題はある。彼はうっかり発言で批判されているが、実力不足で批判されているのではない。そうしたミスなら自分も多く犯してきた。ゲデス経済相は辞任を口にしてなどいない。彼は政権最後の日までとどまる」と発言した。