「日本の復興が知りたかった」
「東日本大震災の少し前に私の国でも大地震があって、日本の復興具合に興味を持っていたんです」。福島県庁国際課の国際交流員でニュージーランド人のトビー・バークベックジョーンズさん(31)は、日本の総務省、外務省、文部科学省等が実施する「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)に応募した理由をそう語った。
同国南島の最大都市クライストチャーチに住んでいた2011年2月22日、カンタベリー地震が発生して185人の犠牲者を出し、同市も被災した。元々日本の文化や歴史等に興味があって日本留学も経験済みだったが、今回は「復興に繋がる仕事がしたい」と特に希望し、17年に福島県配属が決まった。
福島の第一印象を「思いのほか綺麗で驚いた」と語り、母国と比べて復興が進んでいる様子に感心した。「震災前より視野を広げ、新しい事に挑戦しよう」という意欲を感じ、「今は明るい福島へ戻る寸前だと感じる」と語った。
好きな場所は、歴史や文化が楽しめる会津若松や自然豊かな裏磐梯など様々だが、特に気に入っているのは「妻と出会ったけんか祭りがある飯坂温泉」。福島にはまだ海外に知られていない魅力がたくさん。「ぜひ色んな人に訪れてほしい」と強く願った。
「福島は食も文化も本当に豊か」
ウインズ・祐希国際交流員(24)は父がカナダ人、母が日本人、バンクーバー市出身の日系カナダ人だ。幼い頃からよく母の実家の群馬県に訪れており、日本は身近な存在だった。「昔から母とは日本語で話し、学校ではフランス語で教育を受けた」と多言語環境で育ち、自然と語学に関わる仕事に就きたいと考えるようになってJETプログラムに応募した。
福島県に配属された時、東日本大震災が起きた高校2年生の時を思い出した。祐希さんと妹は当時、震災後の深刻な状況に少しでも力になるように、自主的に学校で1週間ほど募金活動を行い、約200ドル集めて日本へ送ったからだ。津波で流された物がカナダやアメリカの海岸に流れ着き、清掃する活動も行われていたという。
「福島県で働くのは、あの時の気持ちと繋がるので嬉しかった」と振り返り、「NHKを見ていたので特に心配していませんでした」と落ち着いた口調で語る。ただし最初は、生活の場のあちこちに放射線測定器があることに驚いた。また、震災関連の施設が多いことに、被害の傷あとの大きさを感じさせられた。
とはいえ、ここでの暮らしはとても居心地が良かった。「自然や景色がカナダに似ている。観光地なので文化が豊かで食べ物もとても美味しい。特に地元で有名な円盤餃子や桃などの果物が好きです」とほほ笑む。
今年は東京五輪。「県民は一生懸命、復興に取り組んでいる。それも含めて海外の人に福島の魅力を知ってもらいたい」と語った。
福島県の中南米・北米移住者子弟研修では、国際交流員が事業の一翼を担っている。