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「期待の経済回復」、一体どこへ?

「ディズニーランドに行かせて」とジウマ元大統領に抗議した親子(twitter)

 ここ最近、ブラジル経済に関して、労働者党(PT)支持者の、からかい半分の現政権への挑発がネット上で目だっている。
 コラム子がそれを感じたのは、ツイッターで「フォーラ(やめろ)、ジウマ」のハッシュタグを最近よく見かけるようになったことによる。
 これはどういう意味かと言うと、「ジウマの時は1ドルが4レアル台に乗っただけで大統領罷免を求める人があんなにたくさんいたのに」という意味だ。この皮肉は昨年11月、1ドルが4・20レアルに達して過去最高を更新したときから言及されはじめていたが、今や1ドルは4レアルどころか5レアルまで上がってきている。
 さらに今年の2月、パウロ・ゲデス経済相がドル高レアル安を擁護し、「家政婦の身分でディズニーランドなんて行く時代は終わったんだ」という発言を行なったときも、PT支持者たちは、ジウマ氏に対しての罷免デモの際に実際に存在した、お父さんが小さな娘を肩車して「ジウマ、辞めて。私、ディズニーランドに行きたいの」と書いたメッセージを掲げさせた写真を冗談画像にして反論していた。
 すると、この冷やかしは、最近はいろんな過去の言動が冷やかしで使われるようになってきた。
 ひとつは2018年10月、ボルソナロ氏が大統領選の一次投票を圧倒的にリードして決選投票に臨む前の10月17日頃に出た記事で、スイスの信託企業が「ボルソナロ氏が大統領になったら、1ドルは3・50レアルほどに下がるかもしれない」と予測したものだ。
 さらに今年の3月5日、経済学者のリカルド・アモリム氏が、2018年9月23日に、投資企業「XP」のイベントで、「(ボルソナロ氏の大統領選での対抗馬だったPTの)ハダジ氏が大統領になったら、1ドルが5レアルに到達するだろう」と語っていた事実が報道され、これも一時、ツイッター・ランキングの上位に入っていた。
 もっとも18年の大統領選の際に、このような言動を行なっていたのは例にあげた人たちだけではない。現在の世界経済で主流のネオ・リベラル派の人たちが、左派PT政権から離れ、右翼の政権が誕生することで、経済が好転すると踏んでいた。実際の話、その期待感があったから、ボルソナロ氏は、それまでにかなり物議を醸してきた、女性や黒人、LGBTなどに対しての問題発言がありながらも当選した。ネガティヴな不安より、ポジティヴな期待感が上回っていたのだ。
 だが、その期待されていた経済面が、ここに来て苦境を迎えている。2019年の国内総生産の伸びはわずか1・1%にとどまり、1ドルは4・70レアル台にまで上がり、サンパウロ平均株価指数(IBOVESPA)も9日には21世紀に入ってから最大の下落を記録。それに加えて、コロナウイルスのパンデミック指定や、原油の暴落ショックも重なって、さらに悪化することも予想されている。
 本来ならここで、かなり気を引き締めなくてはいけないボルソナロ氏なのだが、しかし、10日の発言で同氏から出たのは「コロナウイルスも原油暴落も大したことではない」。さらに、「民主主義を揺るがしかねない」と不評の、15日に開催予定の反連邦議会、反最高裁のデモを煽っている状況だ。
 このように本人が無自覚だから、それこそ「ハダジ氏が大統領なら到達」と思われていた1ドル=5レアルに一瞬とはいえ、実際に到達したのだろう。(陽)