【既報関連】ボルソナロ大統領(行政府)を擁護し、議会(立法府)、最高裁(司法府)を批判するデモが15日に各地で発生。新型コロナウイルス災禍が拡大し、自らも罹患の疑いが生じたため、12日には「デモはやらなくて良い。感染リスクを高めるべきではない。自分も参加できない」と言っていたボルソナロ大統領は、保健省のプロトコロを無視して支持者らの前に現れ、大勢と握手するなどの身体的接触も行ったと、15、16日付現地各紙・サイトが報じている。
ボルソナロ大統領は今月初めに米国訪問を行った。訪米に同行したブラジル政府高官や米国で接触した人の中からは新型コロナウイルス感染症(COVID―19)感染者が11人も出ており、大統領に対しても14日間の隔離と健康状態の定期検査措置が取られていたが、自らそれを破った。
ブラジル紙は、大統領官邸から出てきた大統領の映像を分析。「58分間で272人と身体的に接触し、セルフィーを求める人々から渡されたスマートフォン128個に触れた」としている。
サンパウロ州連邦大学疫病学教授のナンシー・ベッレイ氏は、「大統領がこんなことをすれば、保健省が『人ごみを避けて』『感染の疑いのある人は自宅に留まって』と呼びかけても、国民はまともに受け取らない」と批判している。
大統領の信じ難い振る舞いの後、ブラジル保健省は「デモ、コンサート、礼拝など、今はいかなる人ごみも避けるべき」と発表。ルイス・エンリケ・マンデッタ保健相も、「人ごみの中に入るなんて完全に間違った行為」と語ったが、それらもむなしく響いた。
大統領の行為は、「コロナ危機の最中にある国民を命の危険にさらす」だけでなく、「三権の対立を扇動する」という側面も大きい。
大統領が笑顔を振りまいて握手し、セルフィーを撮ったりした相手は、「マイア下院議長出て行け!」、「もう議会なんか閉鎖だ!」と叫んだだけでなく、最高裁のジアス・トフォリ判事さえも批判していた。
大統領はカーニバル前に、「3・15、大統領擁護、アンチ議会、アンチ最高裁デモ」を呼びかけるメッセージをスマートフォンで拡散したことが発覚し、批判を受けたが、「仲間内のメッセージ拡散は公式な立場を表明したものでもない」と言い逃れしていた。先週末には「デモはやらなくて良い。『大統領の政策を邪魔するな』とのメッセージは、もう議会にも伝わっているはず」というビデオ演説も行ったが、15日は「くたばれ議会」を叫ぶ群衆の前で喝采を浴び、満面の笑みをこぼした。
ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)は、「三権対立を煽らないという面でも、国民の命を守るという面でも矛盾した行為」と非難した。ロドリゴ・マイア下院議長(DEM)も、「大統領はデモなどに出ず、問題を解決するためにもっと注力すべき」と語った。