ブラジル岡山県人会(角南美佐子会長)は『ひな祭り』を3月1日(日)正午頃から、サンパウロ市リベルダーデ区の同会館で行い、約90人が訪れた。サロンには日本から持ってきた7段の本格的ひな壇が飾られ、着物姿の少女ら煎茶を来場者に接待するなど、無料で日本風情が存分に楽しめるイベントとなった。
協賛団体・煎茶道静風流灯楽会のメンバーである狩俣登美子さんの日本語学校生徒や、煎茶のメンバーら約10人がお茶の接待係をし、艶やかな着物で応対した。
同校の生徒には五世や非日系もいるが、授業で静風流のお点前を体験しており、当日は日本語での丁寧なやりとりまで披露した。
その他、元県費研修生らによってポルトガル語で雛まつりの説明が行われ、折り紙や福笑いを体験するコーナーも作られた。着物姿の中江テルマさん(29、三世)は2005年に1カ月の文化体験、2017年に3カ月半の県費研修をした経験がある。話を聞くと流暢な日本語で、「05年の時に岡山市の百貨店・天満屋でお会いした社長さんが、2017年に行った時には知事さんになっていて驚きました」と笑った。
伊原木隆太県知事は、天満屋の創業ファミリーの一人で、2012年に同代表取締役社長を退任して、岡山県知事選挙に出馬した。
同県人会の松酒クリスチーナ早苗さんに静風流と岡山県人会のつながりを聞くと、「母(故松酒紀美子さん)が静風流だったので」とのこと。紀美子さんは煎茶道静風流師範を取得して灯楽会ブラジル支部支部長になり、同県人会でも理事や婦人部副部長を任じ、両会をつなげる一人だったようだ。
7段のひな壇は、岡美恵子婦人会長が、40年前に日本から持ってきたもの。「主人(岡詢元会長)の母から、『どうしても孫にやりたいから持っていってくれ』と頼まれ、飛行機で3回に分けて手持ちで運び込んだ。主人が会長になった32年前から県人会に飾り始めたんです。1988年、このひな飾りを見た古参移民の方が、『自分も子供の頃にやってもらった。何十年ぶりかにひな壇を見た。本当に懐かしい。感激した』と言われて、泣いておられました」と思い出す。
それからずっと続けており、「そのうち、だんたんお茶とか生け花とかをやるようになって本格的になった。日本文化を広めたいという気持ちの積み重ねです」と語った。
角南会長は「雛まつりをやっている唯一の県人会では。今回もお客さんがいっぱい来てくれてよかった。お茶の皆さんのおかげ。楽しんでもらえるのが一番」と微笑んだ。