【既報関連】新型コロナウイルスショックが経済を直撃している中、ブラジル政府は18日、「労働者の就業時間と給与を企業側が最大で半減することを許可する措置や、非正規雇用の労働者に3カ月間、月額200レアルのバウチャー(商品券)を配布する措置などを含んだ暫定令(MP)を出すことを計画している。また、同じ日に開催されたブラジル中銀の通貨政策審議会(Copom)では、経済基本金利(Selic)が0・5%ポイント(P)ダウンの年利3・75%に設定された。18、19日付現地各紙・サイトが報じている。
連邦政府は、「時短および給与削減措置」を、「コロナショックを理由にしての大量解雇を防ぐため」としているが、組合側は、「企業側の人件費削減がやりやすくなる」と反発している。
暫定令には、「企業が集団休暇をとらせる場合は48時間前に通達すれば良い」「勤続期間保障基金(FGTS)の支払いを停止できる」「一時的に早上がりさせ、落ち着いたら残業でカバーさせる(バンコ・デ・オーラス)」なども含まれる予定だ。労働者には、勤務期間が1年に達していなくても、15日までの休暇を前倒しで取得できる」権利を与える見込みだ。
「時短および給与削減措置」は、19日に下院で承認され、上院承認待ちの、非常事態宣言(カラミダーデ・プブリカ)が解かれるまで有効だ。
また、月額200レアルの商品券配布は、他の収入のない非正規雇用者、最大2千万人に恩恵があると、現地紙は報じている。
連邦政府は、非常事態宣言の承認により、今年度予算の基礎的収支赤字上限を1400億レアル~2千億レアルに拡大すれば、財政出動が可能になると考えている。
17日に発表された景気刺激策は、規模こそ1470億レアルだったものの、社会保障や恩給の支払いを早めたり、企業から取り立てる税金の支払い期日を延ばしたりするだけで、歳出を増やすものではなかった。
しかし、18日発表の「非正規雇用者への200レアルのバウチャー配布」は、120~150億レアルの財政出動となる。コロナウイルス関連の景気刺激策の規模は、18日の時点で1696億レアルとなる見込みだ。
Selic0・5%ダウン
10日で6度目のサーキットブレーカー(株式急落による取引一時停止措置)発動となった19日、中銀CopomはSelicを3・75%に変更。史上最低記録を更新した。昨年7月31日以来、6会合連続の利下げだ。
Selicは昨年12月に4・5%に下がった時に、「当分はこれ以上は下がらない」と見られていたが、年明けにかけての経済指標の不調により、今年最初の2月の会合で0・25%P利下げとなった。
その時も「これ以上の利下げはない」と見られていたのに、そこから43日間で、世界経済やブラジル経済の情勢は一変した。コロナ感染を食い止めるため、世界中で外出禁止令や国境封鎖が起こったことなどで、世界経済が大打撃を受けているため、中銀の判断はさらなる利下げに傾いた。