【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大によって経済活動が落ち込んでいることで、感染拡大を抑制するための外出制限などに伴う勤務形態の変化とともに、解雇などが起きるのを避けるため、連邦政府が提唱していた対策に関し、ボルソナロ大統領が22日に暫定令(MP)を出したが、その中に、「雇用主は4カ月にわたって労働契約を停止し、雇用者への給与支払いを止めても良い」との規定があり、物議を醸した。大統領は、サンパウロ州などがはじめた新型コロナウイルス対策のための非常事態宣言などにも苦言を呈しており、政界内に大きな波紋を投げかけている。23日付現地サイトが報じている。
今回のMP第927号は22日の夜、連邦政府の官報に掲載された。暫定令そのものは、経済相が先週、発表した、新型コロナ禍による非常事態の間の雇用確保に関するものだが、その中に、雇用主は「最大120日にわたって雇用契約を差し止めることができる」とあり、物議を醸した。
MPによると、雇用主はその間、雇用者に対して「(オンラインの)職業プログラム」を提供する義務がある。また、労働契約を一時差し止めた場合も、健康プランなどの保険は継続して保証すべきことも明記されていた。この項目は議会関係者などから、「これではコロナではなく、飢えで国民が殺されてしまう」と強い反発を招き、23日午後、削除された。
その他の項目は、在宅勤務を含む遠隔勤務や、非常事態宣言の期間中に働けなかった時間分は、通常勤務に復帰してから働く(バンコ・デ・オーラ)ことを認める、48時間前の通達により、休暇を前倒しで取らせることができるようにする、集団休暇の導入、勤続期間保証基金(FGTS)の積み立てを一時的に差し止める(先送りする)ことを認めることなども記されている。
これらの条件は、組合との同意を経ずに、対個人、対団体で取り決めることができる。このMPは非常事態宣言に伴う特別措置を規定したもので、労働法よりも拘束力がある。
MPは官報に掲載されると同時に効力を発するが、6カ月以内に議会で承認を得る必要がある。
他方、週末から週明けにかけての混乱は今回のMP発行に関するものだけではない。
新型コロナウイルスに関しては、連邦政府と州政府の間の足並みの乱れが見られ、州知事たちが行っているコロナウイルス対策をボルソナロ大統領が批判する光景が繰り返されている。
大統領はかねてから、コロナウイルスに関して「マスコミはヒステリックに報道している」「非常事態宣言は経済を破滅させる」と主張。サンパウロ州のジョアン・ドリア知事が出した非常事態宣言を「ルナチコ(狂気の沙汰)」とも呼んだが、知事たちのコロナ対策は大統領のそれよりも大きく支持されていることも世論調査で発表されていた。
大統領は21日も「空港や国道を封鎖する権限は大統領が持つ」とするMPを出し、リオ州知事が出したコロナ対策を否定する姿勢を見せた。