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【外出自粛生活の読者レポート】「こんなに親思いだったか?」=パラナ州パラナグア市在住 増田二郎

大好きなゲートボールもしばらくはおあずけ

 今、世界の話題はパンデミック一色です。日本のNHK、当国のグローボやSBT放送局など、どのチャンネルを廻してもニュースはパンデミックだけです。
 こちらは81歳、戦後呼び寄せ移民の生き残りです。趣味はゲートボールとカラオケですが、この2週間は息子たちから「パパイ外出禁止だよ!」と言われ続けています。
 「こんなにも親思いだったか!」とうるうるしたら、長女から「パパイが入院したら、家族から離れて看病に行かないといけないでしょう!」と言われ、「なんだそうだったのか」と合点したところ。
 考えてみますとこの流行病、今に始まったわけではありません。歴史書を紐解けば、キリストの青年時代から有りました。あの時代のパンデミックは、らい病レプラ。患者は一般人と隔離され、谷底生活を余儀なくされたとか。
 その後、ペストが何世紀にわたって猛威を振るいます。特に十四世紀から十六世紀の黒死病は、文学作品「ロミオとジュリエット」にも登場。この十六世紀はパンデミックが世界を駆け巡った時代でもありました。
 1492年だったかな、あの偉大なコロンブスが新大陸を発見します。後はみなさんご承知ですね、ポルトガル王国も負けじと、ペドロ・アウバレス・カブラウ艦隊がブラジルを発見します。彼らは鉄砲という新兵器、新大陸には当時居なかった馬に跨がっての登場で、土民たちの度肝をぬき征服します。
 でもヨーロッパは、この征服で高い代償を払わされます。梅毒です。新大陸の風土病梅毒は瞬く間に世界に蔓延しました。もっとも、新大陸の住民もヨーロッパから持ち込まれた感染病原、ペスト菌やコレラ菌で滅ばされてしまいます。
 特にマヤ文化やインカ帝国などです。抒情詩では、スペイン人の英雄的征服だったと美しく歌い上げられています。ですが実際は抗体を持たなかった土民が、ペスト菌にやられただけだったのかもしれません。
 一方、新大陸から欧州に持ち帰った梅毒は瞬く間に広がり、インド、フイリピン、沖縄を通って戦国時代には火縄銃と共に日本にも上陸しました。梅毒は、滅ぼされた新大陸の土民の呪い病で、不治の病なのだと長く恐れられていました。
 ですが第2次大戦後ペニシリンが作られ、梅毒は怖くなくなります。
 これらの細菌たち、戦後はエイズと言う新しい病名で登場します。コレラ、チフス、天然痘などと名前こそ違いますが、怖い感染病、伝染病という意味ではみな同じだったのです。
 民が好景気に浮かれ忘れた頃、必ず名前を変えて現れます。スペイン風邪、アジア風邪、数年前のサウルス菌など。今回もコロナウイルスと名付けられ、猛威を振るっています。
 救いなのは、感染患者たちの犠牲者が3%未満と比較的少ない事。ですがそれは年少者たちの場合であり、持病を持つ高齢者だと死亡率は10%を越すそうです。イタリアやスペインなどの犠牲者の数は、中国を越えました。日本同様老人が多いヨーロッパの指導者たちは戦戦恐恐です。
 我がブラジルでもボルソナロ大統領が記者会見での質問に、謙虚にパンデミック対策を説明すべきを「たかが風邪、小さい小さい」と木で鼻を括ったようなことを言ったので、国中の政界、財界、医学会、グローボ局が寄ってたかってこき下ろす始末です。
 お陰で白熱したTVのニュース番組は、外に出られない私たち年寄りの格好の暇つぶしになりました。
 今までも伝染病の危機は度々ありましたが、その度に、人類は昼夜を問わず研究に身を捧げ、新薬を発明してきました。今回もきっとパスツールやコッホ、北里柴三郎や野口英世のような人が現れ、人類を救う薬を発明してくれる事でしょう。