最高裁は15日、新型コロナウイルスに関する具体的な対策を決める権利は州や市にあることを、実質的な満場一致で決めた。16日にはルイス・エンリケ・マンデッタ保健相が記者会見を開き、「後任は今日にも決まる」と語ったが、最高裁の決定は、社会的隔離を推進するマンデッタ氏とそれを支持する国民の意向を汲んだものとみられている。15日付現地紙などが報じている。
今回の最高裁の審理は、ボルソナロ大統領が「外出自粛などに関する決定は大統領が行うものとする」として3月21日に出した、「非常時でも不可欠な本質的なサービス」や「止めてはならない公共サービス」を定めた暫定令(MP)926号に対して、民主労働党(PDT)が最高裁に起こした違憲性を問う直接訴訟(ADI)に関するものだ。
この日の審理は、コロナ感染の危険性を配慮して、最高裁史上初めて、ビデオ・カンファレンスの形で行われた。11人の判事の内、ルイス・ロベルト・バローゾ判事はコロナへの感染も疑われているため、参加を辞退。コロナには罹患してはいなかったものの、病気でしばらく公務を遠ざかっていたセウソ・デ・メロ判事も、投票には参加しなかった。
審理は、報告官を務めたマルコ・アウレーリオ・メロ判事が訴えた、「州や市が当該地の必要性に応じた判断を行う権利」を認めるかを問う形となり、審理に参加した8人の判事が全員、賛成票を投じた。
票を投じなかったバローゾ判事も、大統領の「ブラジルは止まれない」キャンペーンの差し止め命令を出しており、セウソ判事も大統領が反議会、反最高裁のデモを煽る行為を行った際に厳しい批判を行っている。
今回の判決は、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が8日に出した、「大統領には州や市の外出自粛令を解くことはできない」とした予備判決を増強した結果となり、13日にアウグス・アラス連邦検察庁長官が出した「大統領に判断する権利がある」との意見書は否定された。
今回の審理は、先週から続く大統領との対立からマンデッタ保健相の解任が避けられぬものとなった矢先に行われており、後任人事によって国民の8割近くが賛成する各自治体による隔離政策を大統領が覆らせないようにするためのものとも見られている。
マンデッタ保健相は16日午後の定例会見前に、解任されたことを公表。会見では保健省スタッフの名前を挙げて働きに感謝した。正式な解任は、定例会見後にボルソナロ大統領が行った記者会見で発表されたが、マンデッタ氏自身が解任を公表した直後から、各地で抗議行動が発生。大統領の会見時には、「ボルソナロ辞めろ」の声も響いた。
なお、後任には腫瘍内科医のネウソン・タイシ氏が指名された。