エルネスト・アラウージョ外相がブログに「新型コロナウイルスは共産主義のウイルス」と書き、さらに世界保健機関(WHO)も批判したことで波紋を広げている。このところ、ボルソナロ政権関係者による、中国やWHOへの攻撃・批判が目立ち、今後の中国との関係やコロナ対策での不安を増大させかねない。22日付現地サイトが報じている。
アラウージョ外相は22日未明、自身のブログに「世界で18万人の命を奪ったコロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は、グローバリズム主義者の陰謀であり、新たな共産主義への道だ」と書いた。
アラウージョ氏によると、「(新共産主義への道は)気候変動やジェンダーのイデオロギー、政治的に正しい教義主義、移民や人種主義、反民族主義、科学万能主義による社会の再構によって、既にはじまっていた。だが、パンデミックは多くの人の命や社会を危険にさらす」と言い、「コミュナウイルス(共産ウイルス)はコミュニストたちによる悪夢だ」と綴った。
コロナウイルスを「中国が仕掛けた陰謀のウイルス」とする説は、ボルソナロ大統領三男のエドゥアルド下議やアブラアン・ウェイントラウビ教育相が立て続けに表明し、在ブラジル中国大使館が猛抗議を行ってきた。
中国はブラジルにとって世界でも有数の重要な貿易相手国であり、国内のインフラ事業などでも、同国企業が大型の投資を行っている例が少なくない。コロナウイルス対策に関してみれば、中国はマスクや人工呼吸器の供給国でもある。
同相はさらに、WHOにも強い疑問をなげかけ、「国際機関に権力を与えることは、地球全体が共産主義化してしまうことへの第一歩だ」とも記した。
20日に開催された国連総会で、ブラジルは、WHOがコロナウイルスに関する対応で極めて重要なリーダー的役割を果たしており、WHOの意向を問題解決のための参考にするという協定に同意しなかった。これは、「WHOへの資金援助を打ち切る」としたトランプ大統領の米国に続いたものだが、この協定に同意しなかった国は、国連参加193カ国中、わずか14カ国しかない。
アラウージョ外相は過去にも、「地球温暖化は共産主義者の陰謀」「ナチス・ドイツは左翼の生んだ産物」などと発言して、問題を招いたことがある。