【既報関連】ブラジルではコロナ対応に社会格差があり、諸外国より黒人や若者が多く死ぬ傾向があると28日付現地紙、サイトが報じた。
27日夜の保健省の発表によると、感染者は前日比2万599人増の41万1821人、死者は1086人増の2万5598人だった。死者の内、直近3日間に死亡した人は500人で、それ以外はその前に亡くなった人だ。また、コロナ感染が死因と疑われ、調査中の死者も4108人いる。調査中の人も含めた死者の数はフランス、スペインを上回っている。28日夜発表ではコロナ死者は1日で1157人、計2万6754人になった。
ブラジルのコロナ感染者の致死率は、検査規模が不十分なため、6~7%台を下らない(27日現在は6・2%)が、フランスの開発研究所(IRD)のクリストフ・ギルモト氏(人口学者)によると、ブラジルでは若者の死者が先進国より多い。G1電子版28日付ヘリオ・グロヴィツ氏のブログ( https://g1.globo.com/mundo/blog/helio-gurovitz/post/2020/05/28/covid-mata-mais-jovens-no-brasil.ghtml )で報じられている。
ギルモト氏は、コロナ感染による死者の80%近くを占める19カ国のデータを解析。欧州8カ国と米国については性別や年齢層別の比較も行っているが、ブラジルのデータを欧米9カ国と比べた結果、ブラジルの35歳未満の若者100万人あたりの死者数(死亡率)は5・9人(男性6・5、女性5・2)で、9カ国平均の3・5人(男性4・7、女性2・4)を65%以上上回った。
35歳未満の死者はブラジル全体のコロナによる死者の6%で、高齢者よりはずっと少ない。だが、米国の同年齢層の死者は全体の1%である事などを見ても、ブラジルは若者の死亡率が高いといえる。
また、サンパウロ総合大学医学部のパウロ・ロトゥフォ氏は、ブラジルでは心臓疾患による女性の死亡率が元々高い事が、コロナによる死者の性差が小さい理由である可能性を指摘している。
他方、保健衛生に関する情報運用センター(NOIS)が、18日までに死亡または退院して治療が終了した感染者3万人のデータを解析した結果、人種や学歴による死亡率の違いが如実に表れたという。この調査は「死亡者または退院した人」のみが対象。治療中の人は含まないため死亡率が大変高く、治療中の人も含んだ全体像とはだいぶ印象が異なる数字となっている。エスタード紙28日付( https://paginadoestado.com.br/taxa-de-morte-por-coronavirus-e-maior-entre-negros-e-analfabetos/)が報じた。
同調査では、黒人や黒人との混血のパルド(以下、黒人)の感染者は55%が死亡したが、白人の死者は38%だった。年齢別に見た場合も、黒人は白人より致死率が高い。また、無学歴の感染者は71%が死亡したが、大卒以上の死者は23%など、学歴による差がある事も判明。学歴と人種を掛け合わせてみると、黒人と白人の致死率は平均で35%(大卒以上では50%)の差があった。最もかけ離れた例でみると、無学歴で黒人の場合は80%が死亡したが、白人で大卒以上の場合の死者は19%のみだった。
分析した3万件の内、約55%は回復したが、60歳以上だと過半数、90歳以上だと84%が死亡したという。また、平均寿命や就学年数などを用いて算出する人間開発指数(HDI)が低い地域の死亡率は同指数が高い地域より高かった。
これらの調査からは、人種や学歴の差、所得や衛生施設、医療システムへのアクセスの良否が生死を分け得る事、黒人で学歴が低い上、密閉、密集、密接の3密が起き易いファヴェーラ(スラム街)在住だと死亡率が高い事などが判明した。