5月31日、サンパウロ市パウリスタ大通りで反ファシズムを訴える平和的なデモ行進が行われたが、ボルソナロ大統領支持派の乱入により、大混乱が生じた。このところ、ボルソナロ大統領やフェイクニュース(FN)捜査の対象となった人物による、ファシズム、ナチス的な挑発的行為が相次いでいた。5月30~6月1日付現地紙が報じている。
今回の反ファシズムデモは、ボルソナロ大統領がセルジオ・モロ前法相から「連邦警察介入疑惑」を告発された後から顕著になっている、反最高裁、反議会、反民主主義の動きに抗議するものだ。
5月22日はアウグスト・エレーノ安全保障室(GSI)長官が、「大統領の携帯電話押収を実行すれば、不測の事態が起こりうる」と警告。5月27日には、大統領三男エドゥアルド下議が、複数の知人が捜査対象とされたFN捜査後、「大統領を追い詰めたら、(独裁者と言われるような)強硬な処置も辞さないだろう」と、いずれも軍事クーデターを示唆するような発言をして問題となった。それを受け、エレーノ氏は最高裁から発言の真意を問われ、エドゥアルド氏は下院で供述するために召喚されている。
5月28日にはボルソナロ大統領が、29日にはFN捜査の対象になったブロガーのアラン・ドス・サントス氏が、ネット上で牛乳をコップで飲みほす姿を見せ、物議を醸した。これは近年、ネオナチ主義者の間で「白人優越主義の象徴」として行われる行為だったためだ。さらに、29日夜にはブラジリアで、同じくFN捜査を受けている活動家のサラ・ウィンター氏が率いるネオナチ集団「300・ド・ブラジル」が30人ほどで、アメリカの人種差別集団「クー・クラックス・クラン」の行進を思わせる、火のついた松明を持っての行進を行っている。
そのような反民主主義的なマニフェストに抗議して、5月31日にサンパウロ市ではアンチ・ファシスト行進が行われた。主催はサッカー・クラブ、コリンチャンスの応援団で、そこにパルメイラスなど、他チームの応援団も超党派で加わった。500人ほどが参加した行進は午後2時頃にはじまり、穏便に行われていた。
ところが、途中で出会ったボルソナロ支持派の一団が挑発し、一発触発の状態となった。サラ・ウィンター氏が軍事訓練を受けたウクライナのネオナチ集団の旗などを掲げて集まったボルソナロ支持者らが、反ファシズムのデモ参加者を挑発したため、軍警は両者を分けようとゴム弾を使用して両者を分ける必要が生じた。それに反発して、反ファシズムの参加者が物を投げてきたという。現場では、投石などの暴力的な行為や、ゴミ箱への放火、ブラジル国旗を焼くなどの光景も見られた。ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は混乱を収めた軍警の行動をほめた。
米国旗を抱え、金属バットを持って参加した大統領支持者の女性が軍警から保護を受けていた動画も拡散され、これも物議を醸している。
最高裁で大統領による連警介入疑惑を担当するセウソ・デ・メロ判事は、個人的な見解としつつ、ボルソナロ大統領の最近の行動は「ヒトラー台頭時のドイツを思わせる」と批判している。