西部アマゾン地域日系社会は、2018年にブラジル日本移民110周年記念で御来伯された真子内親王がマナウスへ御来訪されるため諸準備に忙しい日々を過ごし、更に2019年は日本人アマゾン移住90周年記念で当地域日系社会に存在する団体が一体化して記念すべき年に相応しい盛大な式典やイベントを遂行した。
思い起こせば多忙な2年間であり、2020年こそ落ち着ける年かと思っていた矢先に起きたのが「新型コロナウイルス」問題である。
サンパウロやリオで感染拡大が始まったころは多少の覚悟はしていたものの、まさかアマゾナス州がこれほどの感染拡大に見舞われるとは思ってもいなかった。
それも民営健康保険を有する階級は別として、一般庶民は公共病院(SUS)に頼るしかない、ただでさえ病床に余裕のない公共病院の現状でパンデミック状態に陥るのは時間の問題とマスコミや衛生関連機関が騒ぎ、事実多くの犠牲者があった。
マナウス市及びアマゾナス州政府では自粛は勿論、衛生面での手順、クラスターを避けるために教育機関や商店を閉鎖し、不必要な外出も避けるように求め、感染封じの対策を講じた。かと言って一部のクラスは別として、素直に取るべき措置を実行しなかった一般庶民もかなりいたのではないだろうか。
その結果、アマゾナス州は全国レベルから見ても不名誉な6番目に感染者数が多い州となっている。アマゾナス州政府及びマナウス市役所が制定した規準に基づき西部アマゾン日伯協会も業務を縮小し、特に収入源の要である日本語講座・日本語学校は閉鎖を余儀なくされ、当然の成り行きで授業料による収入は途絶えた。
かと言って従業員や教師一同の給料や手当は支払わないわけにはいかない。売り上げのない商店や生産が途絶えた企業同様に窮地に立たされているのが現状である。
一方、上記に述べたようにアマゾナス州は全国でも感染者が多い州であると言うことは、見方を変えれば「免疫がついた人も多い」と言える。
更に、この感染者数はあくまでも検査を受けた「陽性」の結果による数字であって、感染しても検査を受けず回復した人はこの調査に含まれていない。
事実、仕事柄、色々な人と新型コロナウイルス感染について話を交わしたところ、「新型コロナウイルス特有の症状が現れたが検査を受けずに回復した」と言う人がかなりいるということが分かった。
因みに検査を受けるにはマナウスでは民間検査機関で300レアルを支払わなければならない。つまり一般庶民には受けられ難い金額である。従って、実際の感染者数は報道された数字を大きく超えていると推測できる。
逆に言えば、ワクチンが未開発の現状で自粛解除後に第2波が生じた場合には、個人的で素人の勝手な考えだが、免疫がついた人が多くいると言うことは感染拡大防止に有利であると言えることは、せめてもの慰めである。
一方、日本の国民と政府が新型コロナウイルス対策のために一丸となって協力する姿勢により緊急事態が解除されたことは、ブラジルでの大部分の州政府及び市役所が取った強引とも言える手段のその本音にある「コロナ問題を利用して政権奪回を謀り個人の優先のみを企てる」といったブラジルの一部の政治家に対する戒めとも捉えられるのではないだろうか。
この事柄も組織と連帯感を慮る日本人、そしてブラジル日系社会を組織する日系人特有の他人を思いやる心が成しえる美徳であると「一人の日系人」として誇りに思っている。
そして、この機会にブラジル日系社会同士の絆が更に強まり、また現地ブラジル社会との親睦が益々深まることを心より祈る次第である。