18日、ボルソナロ大統領長男フラヴィオ上議がリオ州議時代の元職員ファブリシオ・ケイロス容疑者が、潜伏先のサンパウロ州アチバイアで逮捕された。かねてから、大統領一家との深い関係を報じられていた同容疑者の逮捕は、大統領一家にも大きな打撃を与えるものと見られている。同日付現地紙が報じている。
ケイロス容疑者の逮捕は、リオ州議会で横行していた、幽霊職員に払った給与の一部を州議やその代理人の口座にキックバックさせ、州議の政治資金を肥やす「ラシャジーニャ」汚職を捜査する一環として行われた。同件の捜査はリオ州検察局とリオ州市警が行っており、逮捕令状はリオ州地裁が出している。
ケイロス氏の容疑は、ボルソナロ氏が大統領に就任する直前の18年12月に報じられ、同氏にとって最初のスキャンダルとして話題になった。
ケイロス氏はボルソナロ氏の長年の友人で、家ぐるみで付き合いがあり、それを伝える写真が数多く報じられている。ケイロス氏はフラヴィオ氏付だった幽霊職員らの給与を、18年12月までに判明している額で120万レアルほど受け取っていたとされる。フラヴィオ氏付の職員の中には同容疑者の妻や娘も含まれていた。
ケイロス氏はサンパウロ州アチバイアにある、弁護士のフレデリック・ワセフ氏の農園内の持ち家で逮捕された。ワセフ氏はボルソナロ大統領やフラヴィオ上議の担当弁護士で、昨年9月にケイロス容疑者の所在は知らないとしていた。だが、逮捕に参加したサンパウロ州市警によると、ケイロス容疑者はこの家に1年ほど前から潜伏していたと証言したという。同容疑者は一昨年末にサンパウロ市の病院で手術を受けた後、行方が分からなくなり、長期にわたって「逃亡者」とみなされていた。
ワセフ氏は、17日にブラジリアで行われたファビオ・ファリア通信相の就任式に出席していたため、18日は家を留守にしていた。
ケイロス容疑者は18日早朝に逮捕されたが、抵抗する様子はなかったという。部屋には軍政令第5条(AI5)のはがきが壁にはられてあったという。同氏は一度、サンパウロ市に連行され、身体検査を受けた後にヘリコプターでリオに移された。リオ市到着は午前10時過ぎで、市警での事情聴取を受けた後、同市西部バングー区のジェリンシノ複合刑務所に連行された。同容疑者の収容先はベンフィッカの刑務所だが、コロナウイルスの検疫隔離のため、バングーで14日間を過ごすという。
リオ地裁は、ケイロス氏の逮捕後、同氏の妻で逃亡中のマルシア・オリヴェイラ・デ・アギアル氏の逮捕も命じた。
今回のケイロス氏の逮捕について、フラヴィオ氏は「ボルソナロ一族に対して、さらに攻撃が加わった」と批判した。15日には大統領支持派のネオナチ・リーダーのサラ・ウインター容疑者が逮捕され、16日の反民主主義的行為の捜査でも多数の大統領支持者が捜査対象になっていた。
ボルソナロ大統領は、このところ続く身内逮捕や捜査を「司法の陰謀」と考えており、閣僚と対策を話し合う意向を表明しているという。