以前から生活が不安定だった人々は、コロナ禍により追い打ちをかけられるように生活が困窮している。そのような人には、サンパウロ市内のクラコランジアや路上でたむろするホームレス、非正規雇用や飲食業、個人事業主が多く、営業自粛により無収入となった難民や近来移民もいる。その様な人々に温かいまなざしを向け、慈善事業に取り組む様々なNGOプロジェット・パラベンスの中に、日系二世のヤマオ・エドガさん(56、マリンガ生まれ)がいる。彼らの活躍が貧困層救済への大きな一助となっている。
生活困窮者へのセスタ・バジカ(基礎食料セット)や衛生キット、水、衣料品の配布に取り組む同NGO。2016年4月に設立され、企業や団体、個人の寄付を受けて、社会的支援の必要な青少年に様々なオリエンテーション、文化、スポーツなど社会教育活動を通じて、自尊心のある自立した大人に成長できるためのより良い条件を作り出すことを目指してきた。
これまでの主なイベントの一つは、貧困コミュニティーの子供たちのために毎月の誕生日会や子どもの日、クリスマス会などを実施し、700人以上を招待してきた。このイベントは注目を集めるようになり、参加した子供たち全員にイタウ銀行が自転車を寄贈する日もあった。
そのメンバーの一人、日系二世のヤマオさんは、サンパウロ市交通技術公社(CET)の技術者で、休暇を利用してカメラマンとしてボランティア活動に携わる。
「ソーシャルメディアで各NGOの活動を報告するために撮影するのが主な目的です」と話すヤマオさん。同NGOだけでなく、他の様々なNGOの活動にも協力し、撮影以外にも人員が不足する部門でも積極的に手伝うという。
コロナウイルスによる外出自粛が始まった3月に誕生したNGOグルッポ・コミーダ・プラ・ケン・プレシーザでは、6月中旬までにホームレスを中心に14万個以上のマルミッタ(炊き出し弁当)も配布してきた。
現在、プロジェット・パラベンスが資金調達とセスタ・バジカの配布で協力しているNGOの一つに、難民と移民を支援するNGOアフリカ・ド・コラソンがある。
19年12月に150家族の難民の子供たちのためにクリスマスパーティーを開いたのをきっかけに、コロナ自粛が始まってからは生活が困窮する難民と移民へのセスタ・バジカと衛生キットの配布に力を入れる。
「日本から来た私の父は今90歳ですが、慣れない土地で妻と5人の子どもを守るため、大変苦労を重ねました。日系人にはかつて難民のように母国を去ってブラジルに移住した人もいましたが、今ではその仕事ぶりと文化を通して尊敬されるようになりました。受け入れてくれたブラジルに感謝をしており、私も誰かの人生を一変させ、喜び、共感、愛をもたらすことができれば幸せです。プロジェット・パラベンスの活動を知ってもらい、多くの皆様からの協力と支援もお待ちしています」とのべた。
ヤマオさんは現在の難民と移民に、日本人移民とその子孫がたどってきた道のりを重ね合わせ、より良いブラジル社会づくりへの挑戦を続ける。
◆プロジェット・パラベンスのボランティアに興味がある方はvoluntariado@projetoparabens.org.brまで。寄付やパートナーシップに興味がある方はcontato@projetoparabens.org.brまで連絡を。
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ヤマオ・エドガさんは、「歌手の平田ジョエさんの親戚」だという。ということは、福岡県三井郡大刀洗町今村出身者で、元隠れキリシタンの平田家の一族だ。1600年前後からキリスト教信仰を続ける日本最古のカトリック家系の血を引くだけあって、ブラジルに来てからも弱者救済に関心が高く、ボランティア精神が旺盛なのかも。