ブラジルに20兆レアルに及ぶ投資を行ってきた国際投資家達が、森林伐採拡大を懸念し、投資差し止めなどを示唆する書状を8カ国にあるブラジル大使館に送付したと23日付ブラジル国内サイトが報じた。
ボルソナロ大統領は当選直後から、食糧確保のための森林開発や先住民保護区や環境保護区での鉱物採掘を容認する発言を繰り返し行ってきた。現政権になってから、法定アマゾンなどで森林伐採拡大傾向が続いている事は、国立宇宙研究所(Inpe)のデータでも明らかだ。
だが、Inpeが発表した森林伐採拡大のデータは改ざんされたものだとして、ボルソナロ大統領は昨年Inpe所長を解任。森林伐採や森林火災が拡大傾向にある事や、科学者として高い評価を得ていた同所長の解任に対して、国際社会からも批判の声が上がった。それに対して大統領は「法定アマゾンはブラジルの資産だ」などと反論。消火対策などの名目での軍や治安維持軍の派遣こそ行ったものの、積極的な対策は講じてこなかった。
連邦政府の姿勢は、リカルド・サレス環境相が4月22日の閣議で行った、「皆の目がコロナ禍に集中している間に法改正などを行おう」という趣旨の発言にも表れている。この発言は国際社会からも批判を浴び、サレス環境相の解任を求める声も出てきた。
29に及ぶ国際的な投資ファンドなどからの書状は、ブラジルでの森林伐採が拡大傾向にある事やサレス環境相の発言への懸念と共に、このままではブラジルへの投資や資金援助を継続する事が困難になることなどを伝えるものだ。
投資家達は、米国、日本、英国、フランス、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、オランダにあるブラジル大使館に書状を送付。書状には、ブラジルへの投資継続を望んでいる事や経済発展と環境保護は相反するものではない事が明記されており、森林伐採を止め、先住民の権利を守る事を約束するよう求めている。
森林伐採や法定アマゾン内での公共地への不法侵入などが増えた事に対する懸念や抗議の意を伝える書状は、昨年末以降3通目だ。投資家達は、コロナウイルスの世界的流行によって生じた経済危機以上に法定アマゾンの問題を重視しているという。
ロドリゴ・マイア下院議長は23日、ブラジル・フランス商工会議所のオンライン会議で、「国際投資家が環境問題を重要視している事は熟知しており、ブラジルが環境問題について明確な姿勢を示すべきだと考えている」と明言した。
環境団体グリーンピースは、「国際投資家達のメッセージは明白だ。森林伐採や人権保護に関する明確な姿勢を示さなければ、投資家はブラジルから去っていくし、ブラジルに投資された資金も引き上げられるだろう」と主張。法定アマゾン環境調査研究所も「ブラジルが国際社会で生き残るために森林伐採問題の解決は不可避だ。世界中の消費者の関心を掴むには、森林伐採に真摯に取り組む姿勢を早期かつ明確に示し、それを保たねばならない」と述べている。