24日、上院で上下水道整備に関する規制の枠組みなどを定めた基礎公衆衛生法案の審議が行われ、賛成多数で承認された。同法案は、2033年までに、99%の国民に水道を行き渡らせ、90%の下水を処理することを目標としている。これはまた、水道局を民営化させるための大きな一歩とも見られている。25日付現地などが報じている。
今回の法案はかねてから、連邦議会が統一地方選挙(市長・市議選)前の最優先審議事項としていたもので、非常に注目度が高かった。下院ではすでに、昨年12月に承認されていた。大統領が承認すれば、正式に発効する。
同法案の審議で報告官を務めたタッソ・ジェレイサッチ上議(民主社会党・PSDB)は、「現在も3500万人もの国民が浄水にありつけず、1億人以上が、下水垂れ流しの生活を余儀なくされていた」と主張した。
国家レベルで上下水道整備を均一的に向上する同法案の目標を達成するには、5千億~7千億レアルの投資が必要になると推測されている。各州の水道公社の民営化はもちろん、官民合同プロジェクト(PPP)方式の投資も予想される。33年までに目標を達成できない場合は、企業から運営権を取り上げることもありえるとされている。
ブラジルの公衆衛生設備の不備は国際的にも問題視され、改善を求められていた。トラッタ・ブラジル研究所の資料によると、「家に水道が引かれている国民」は2011年で82・4%、17年で83・5%、下水道が完備している(下水処理場につながっている)国民も、11年48・1%、17年52・4%と大幅な改善はみられない。衛生環境は近年になっても遅れた状態のままだ。
同法案には、ごみ投棄場(lixao)廃止期限の延長なども含まれている。
「世界保健機関の統計によれば、ブラジルでは衛生環境の不備ゆえに、年間1万5千人が命を落とし、35万人が病気にかかって入院している」とタッソ上議は訴え、「公衆衛生環境の整備は、国民の健康保持のための緊急課題だ」と法案承認を呼びかけた。
18年の大統領候補でもあったアルヴァロ・ジアス上議(ポデモス)も、「数百万人もの国民が、保健衛生の基本的な権利を脅かされている」と警鐘を鳴らした。
これに対して、労働者党(PT)や社会主義自由党(PSOL)といった左派政党は強い抵抗を示した。新法を実施すれば、民間資本の導入が避けられず、水道局などの民営化が進んでしまうことを恐れている。PT上院リーダーのロジェリオ・カルヴァーリョ上議は、「民間資本が入ること自体に問題はないが、現段階では十分に議論を尽くしたとは言えず、基礎的な衛生環境(施設)を全国民に保証できるとは言い難い」と反対意見を述べた。
投票の結果は65対13の賛成多数で、基礎衛生法案は連邦議会を通過した。これほどの大差で承認されたのは、これまでは反対していた民主労働党(PDT)などが賛成に転じたためた。大統領候補だったシロ・ゴメス氏の実弟のシジ上議は、ネット上でとりわけ強い批判を受けていた。
前財相で現サンパウロ州財務局長のエンリケ・メイレレス氏は、今回の法案承認を受け、「サンパウロ水道公社(SABESP)の将来を検討できる」と喜んだ。SABESPの民営化は、ジョアン・ドリア知事の公約のひとつでもある。