ジウマール・メンデス最高裁判事の軍批判発言がきっかけとなり、エドゥアルド・パズエロ保健相代行(現役の陸軍中将)の解任を求める声が強まっており、ボルソナロ大統領はようやく新保健相を探し始めたと、15日付現地紙などが報じている。
11日にメンデス判事が行なった、元々いた保健医療の専門家を追い出して、この分野に詳しくない軍人が保健省の幹部人事を独占していることへの批判以来、保健省の新しい正式責任者を求める声が強くなっている。
正式な保健大臣が解任されてから丸2カ月間、現役軍人のパズエロ代行が保健省を仕切り、その間に20人前後の軍人が幹部として指名され、専門人材が追い出された。その間に、ブラジルのコロナ死者数は激増し、現在のように世界2位の多さになったことを暗に指して、メンデス判事は「軍はコロナ大虐殺に加担している」と批判した。
メンデス判事の発言以降、連邦政府の一部はパズエロ氏に対して予備役になることを強く求めはじめている。パズエロ氏の退役に関しては以前からあがっていた話で、本人も考えているという。
現役将校でなくなることによって「軍が直接に政治を動かしている」との批判をかわせると考えているためだ。連邦政府では、ルイス・エドゥアルド・ラモス大統領秘書室長官が6月から既に予備役扱いとなっている。
一方、軍や議会中道勢力「セントロン」は、パズエロ氏解任ならびに新しい保健相の就任を、ボルソナロ大統領に求め始めている。とりわけ望んでいるのはセントロンだと言われている。
同グループの各政党の下院リーダーたちは、パズエロ氏が州や市に支給したコロナウイルス対策費の割当金が、連邦議会で承認されたものを下回っていたことから、同氏に対して強い不信感を抱いているという。ボルソナロ政権への協力をはじめて間もないセントロンとしては、保健相という大臣職をえるためのチャンスでもある。
こうした動きを受け、コロナウイルス感染により自宅隔離中のボルソナロ大統領は、パズエロ氏に命じてメンデス判事に電話をかけさせたという。大統領は最高裁との仲が悪化しないことを優先したという。
その一方で、大統領はすでにパズエロ氏に代わる人材を物色中とも言われている。大統領は先週の時点でも、同氏の仕事をほめながらも「ずっとこのままというわけではない」と交替を示唆している。
それに関してアミウトン・モウロン副大統領も14日に「保健相が交替するのは、もうすぐそこまで来ている」と発言した。副大統領はメンデス判事の発言を「行き過ぎたもの」と批判しながらも、「現状の保健省に関しての批判はしたいならしろ」と擁護はしなかった。一部報道では、新保健相が決まった場合、パズエロ氏は、タイシ前保健相の際につとめていたナンバー2の座に戻るという。
昨日付でも報じたように、ヴォックス・ポプリの世論調査によれば82%がパズエロ代行のコロナ対策に対して不満をいだいている。「軍が連邦政府の政治に関わること」に関しても、同調査で65%、5月末に行われたダッタフォーリャの調査でも52%の国民が反対している。