日伯修好125周年と、在日ブラジル人定住化30周年という節目が重なった今年の6月29日、日系ブラジル人女性としては初めての大使(embaixadora)が誕生した。この石谷ファチマ恵子さん(51歳、二世)の大使着任にはボルソナロ大統領も署名し、30日付の官報で掲載された。9日付のニッパキ紙で報じられた。藤田エジムンド進大使以来の日系人大使となる石谷大使は、91年に外務省養成学校「リオ・ブランコ学院」へ入所し、それ以来30年間外交官として貢献し功績を着実に積み上げてきた。
石谷家は現在五人兄弟のうち恵子さん含め3人もの外交官を輩出している。姉妹であるセシリアさんは現在外務省の太平洋地域局日本部・朝鮮半島部長を務めており、クラウディアさんは東京のブラジル大使館で商業部門の責任者を務める。
父の石谷喜義さん(香川県出身)は弁護士として活躍したほか、フィリピンの名誉総領事を定年となるまで勤めた経験もある。11年には在クリチーバ総領事館から旭日双光章を受章した。「不可能はない、全ては仕事や献身、学びにより可能だ」と喜義さんは教え、子供達の選択を応援し続けた。
恵子さんが外交官になることを決心した15歳の頃、「イギリス留学を決めたときは、親からすごく心配された」という。「最終的には応援してくれ、大変励みになりました」と夢のために一歩を踏み出した少女時代を振り返った。
91年に入所したリオ・ブランコ外交官養成所は、年に20人の募集しかなく、ブラジルでも難問中の難問として知られる。同期で、すべての要件を満たして通過したのは13人のみ。うち女性は更に少なく全体の20%に留まるという。
翌年92年石谷さんは第三書記として外交官のキャリアをスタートし順当に昇進してゆき、リオ・ブランコの「外交改善コース(CAD、Curso de Aperfeiçoamento de Diplomatas)」や2009年に国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)にも参加している。
すでに外国赴任をし、駐ロンドンブラジル大使館で第3と第2秘書を務め、モンテビデオ大使館2等書記官、ワシントン大使館参事官、ニューヨークではブラジル国連代表部公使補佐官を経て、17年から19年に駐ローマ・ブラジル大使館でアントニオ・デ・アギアル・パトリオタ前外相と共に働き、信頼も厚い。
若くして国内外で功績を積み、幾度も受勲している。国内ではリオ・ブランコ勲章、グランデ・オフィサー章、コメンダドール顕彰を受勲し、フランスから国家功労勲章を受勲している。