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《ブラジル》税制改革の政府案概要説明=新金融税で年1200億レ調達=低所得者免税、高額所得者増税

経済省特別顧問のギリェルメ・アフィフ・ドミンゴス氏(Foto: José Cruz/Agência Brasil)

 経済省特別顧問のギリェルメ・アフィフ・ドミンゴス氏は、ブラジル政府が税制改革案の概要を説明し、個人所得税(IRPF)の免税額の引き上げ、控除の削減、富裕層向けのより高い税率と新しい金融取引税の導入などが提案されると語った。
 パウロ・ゲデス経済相は、政府の税制改革案を分割して連邦議会に送ると宣言し、21日に第1回部分を渡していたが、残りの部分は分割せずに8月中にまとめて送られる可能性があるという。
 アフィフ氏によれば政府提案の個人所得税変更点は次の通り。現状の免税金額は月1903・99レアルだが、それを約3千レアルに引き上げる。低所職者に有利になる。現在は控除項目として、医療費、扶養、教育費などがあるがそれを削減する。現状では最高27・5%になっている税率を引き下げる。中産階級には有り難い指針だ。そして富裕層向けに高税率の導入。1996年まで存在していた個人所得者向けの会社からの利益分配金・配当金への課税を再開することを挙げている。
 アフィフ特別顧問は「低所得者層向けの免税金額を増やし、現状、27・5%の中間層向けの税率を引き下げたい。高額所得者向けの特別税率、(月収)3万6千~4万レアル以上のものも考えている」と語る。
 ドイツは収入が高いほど税率も高く最高47・5%、中国も45%、スエーデンは61・85%、米国は10%から37%までとなっている。
 同氏はまた、政府は金融取引税(Imposto sobre transações financeiras)を恒久的に課税することで、年間1200億レアルを調達する意向だとしている。この新税が目的とするのは、所得税の減額、社会格差是正政策への財源にすることだと言う。この新税が承認されれば、従来の金融取引税(IOF)は終了させる見通しだ。同氏は新税の詳細を説明しなかったが、ただ税率は0・2%になるだろうとだけ答えた。
 ジェツリオ・ヴァルガス財団財政研究センター(FGV-Direito SP)上級研究員のイザイアス・コエーリョ教授の調査によると、金融取引税を課している国は、アルゼンチン、ボリビア、ペルー、コロンビア、ホンジュラス、ドミニカ共和国、ベネズエラ、ハンガリー、メキシコ、パキスタン、スリランカの11カ国にとどまっているという。

 金融取引新税に関する批判には「一つの商行為に関して、口座を通るたびに何度でも繰り返し課税される」「結果的に貧乏人ほど高い比率で払わされる」などがある。
 それに対して、同氏は「この新税は新しい時代の税金の有り方だ。だから大きな反対派がいる。例えば、今までは税金を払ってこなかった地下経済、合法も非合法もすべて課税される。口座取引をする全員が払う形に変わるから、累進性が基本ではなく、金融取引をする人ほど払うという比率性をモットウとするものだ」と反論した。
 また、付加価値税(IVA)税についてアフィフ特別顧問は「時代遅れ」と批判し、「それは前世紀の税制度であり、今日の経済は凄まじい速度でデジタル化への道を歩もうとしている。感染拡大がデジタル世界をさらに加速させた」と付け加えた。
 一方、同氏は金融取引新税で徴収される年間1200億レアルは、いくつかのプログラムに配分されるとし、たとえば、最低賃金1~1・5サラリオの従業員に対する雇用者側の負担金を免除するべきだと説明。「誰もが雇用に関する税金を2割は少なくしたいと思っている。これ実施したら1200億レアルの半分以上をつぎ込まないとできない」と述べた。
 同氏は「歳出上限を超えることを許す気はない。だから政府としては既存の出費を削るしかない。どこかをけずって100~200億レアルの財源を作り、それを新しいプロジェクトに使うしかない。我々は財源を漁っている」と語った。
 アフィフ氏は「コロナ対策は貧困層に大打撃を与えた。今では政府の補助金プログラムで生活しているが、収束する気配がない。貧困層の援助策を準備しなければならない」と話した。