「日本人がブラジルに移住して、最初に作ったのは学校と会館。同じように連帯するための会館を作る予定でした」――ブラジル人集住地である群馬県大泉町への支援施設開設について、発起人である一般社団法人「日本海外協会」(東京都所在)の林隆春会長は、そうメールでの問い合わせに応えた。コロナ禍により日系ブラジル人をはじめ多くの外国人労働者が仕事を失い、苦しい生活を強いられている事から、3月に急きょ当初の会館から支援センターへと舵を切ったという。
同協会は6月20日、大泉町のブラジリアンプラザ2階に「リスタート(再出発)コミュニティー支援センター」を開設した。新型コロナウイルスの影響で職を失った外国人労働者の再就労支援し、早期の社会復帰を目指す。
開設同日行われたオープン記念式典にはジョアン・デ・メンドンサ・リマ・ネト在東京ブラジル総領事も出席し、林会長らと共にテープカットを行った。式典の様子は朝日新聞や上毛新聞、群馬テレビなどでも報じられ、県内初の外国人労働者支援施設に注目が集まっている。
施設には寝泊りできる個室やシャワールームも備えており、一時保護の機能も有する。現在は主に相談所として運営している。
同センターではハローワークとも連携しながら職業紹介など進めるほか、外国籍者対象の就職説明会や個別企業説明会なども行う予定だという。同協会では、様々な職業訓練を予定しているが「現在コロナ禍で多くの企業には未来を考える余力がない」とブラジルの日系企業にも協力を求めている。
同協会のもとには「コロナ切りにより生活が苦しい」といった外国人からの相談が来ており、大泉で3件、群馬県内で4件、他県から4件など約40人から相談を受けた。
相談内容は「家を追い出された」「家賃の支払いが遅れてしまった。大家と話をして欲しい」といった住居問題のほか「食べ物がない」とか就労問題、「子供の服が買えない」といったものも届いている。「ずっと仕事を探しているが見つからず、失業保険にも生活保護にも該当せず食べ物にも困っている」というボリビア人からの相談を受けており、「このような人が大勢いる」という。
同協会は、5~6月に愛知県の知立団地で「1週間あたりの勤務日数」の調査を、15歳から64歳を対象に992人にアンケートしたところ、4人に1人が就労できず、勤務日数も減少傾向であることが明らかになったという。
精神障害を発症した外国人労働者の引受け依頼も来ており、精神科医とソーシャルワーカーとも連携し、精神障害を持つ人への対応ができるよう進めて行くという。他にもフードバンクとも提携し、様々な種類の支援体制の拠点として機能していきそうだ。