ブラジルでの新型コロナウイルス死者数が7日に10万人、感染者が8日に300万人越えが確実となった6日、ボルソナロ大統領は「死者が10万人に達しても人生は続く」とあっさりと言い切り、むしろ失業者が増えたことを州知事らのせいにして物議を醸した。7日付現地紙が報じている。
これは大統領が毎週木曜晩に行っている恒例のネット生放送で出た発言だった。
この日はエドゥアルド・パズエロ保健相代行と共に出演したが、大統領はパズエロ氏に「死者は10万人行ったのか」と尋ねたあと、「それは残念だ」と語り、さらに「人生は続いていくし、この問題と親密に向き合うしかない」(Vamos tocar a vida. Tocar a vida e buscar uma maneira de se safar desse problema )と話したのみだった。
6日発表の時点でのブラジルにおけるコロナウイルスの死者は、前日より1226人増えて9万8644人と10万人目前、感染者数の方も5万4801人増の291万7562人で、8日には300万人越えというタイミングだった。感染者数、死者数共に米国についで世界第2位で、死者数に関しては世界3位のメキシコの約2倍の数にあたる。
3月にコロナウイルスがブラジルで流行りはじめた頃に、大統領は「グリペジーニャ(軽い風邪)」と呼んで問題視せず、その後、各州、各市が外出自粛政策をはじめると「経済活動を優先しろ」と全国放送で訴え、さらに支持者らに全国的に車両デモ(カレアッタ)を求め、さらに国民の75%の支持を受けていたルイス・エンリケ・マンデッタ保健相を解任するなどして、対立を煽り続けた。
死者数が節目を迎えるたびに「自分の名前はメシアスだが奇跡は起こせない」などと発言したり、ジェットスキーを楽しむ姿が報じられるなど国際的にも問題視されていた。
ボルソナロ氏がネット生放送の中で死者に触れたのはそれだけで、すぐに失業率の方に話をそらした。大統領はここで失業者が全国で約900万増加したことをあげ、「外出自粛をすると強い副作用があることは分かっていたし、だから主張し続けてきたのだ」と、「経済活動の持続」を主張してきた自身の言動を正当化した。さらに、コロナ対策は州や市に決定権があるとした最高裁を責めた。
地理統計院(IBGE)から6日に発表されたデータによると、この4月から6月の3カ月で就業人口は890万人減り、9・6%と大きな落ち込みを記録した。これは2012年にこの数値を記録しはじめて以降では最大の数字となっている。
また大統領はこの日、コロナウイルスに対する将来的なワクチンを1億回分生産させる暫定令(MP)に署名を行っている。