パウロ・ゲデス経済相は11日、目玉部局の局長2人から辞表提出が行われたことを公表した。業務進行の遅れ具合に不満を表明して辞任したのは、民営化局長のサリム・マッタル氏と、手続簡素化・デジタル化局のパウロ・ウェベル氏の2人だ。12日付現地紙が報じている。
ロドリゴ・マイア下院議長との会談の後に行われたこの記者会見で、ゲデス経済相は「仮に、今日“脱走”があったか問われたら、あった言わざるを得ない」と表現した。経済改革を一緒に進める“戦友”が離脱した比喩のようだ。
同経済相の主要スタッフが辞任するのは、ボルソナロ政権発足後のおよそ20カ月で計7人目となる。過去にはブラジル銀行総裁だったルーベン・ノヴァエス氏、経済社会開発銀行(BNDES)総裁だったジョアキン・レヴィ氏、特別戦略プログラム担当だったカイオ・メガーレ氏、連邦財務局長だったマルコス・シントラ氏、国庫局長だったマンスエト・アウメイダ氏が辞任している。
今回の辞任の背景には、経済省が目玉改革としている自らの業務が進行しないことへの苛立ちがある。ゲデス氏自身が、マッタル氏の辞任理由に関して「彼が望んでいるように民営化が進まないことだ」と正式に認めている。
マッタル氏は12日にグローボニュースの取材に対し、「ペトロブラスやブラジル銀行を売れば1兆レアルの収入が入るのに、なぜそれを今やらないんだ」と強い疑問を呈していた。
その前に辞任したノヴァエス氏にも、この不満は共通していた。同氏はブラジル銀行の民営化が不可能であると判明したことで辞任した。ゲデス氏は5月22日に行われた閣僚会議をはじめとした席において、「ブラジル銀行をすぐにでも民営化すべきだ」と主張してきたが周囲の反応は鈍く、国民からも強い反対の声が上がっている。
ゲデス経済相は、今回2局長が離脱しても「経済省の目指している改革を止めることはない」と強調し、「我々ができるのは改革を進めることだけ」と語っている。
翌12日、ボルソナロ大統領はネット投稿に「民営化は進めるし、歳出上限は絶対に守る」との主張を書き、ゲデス氏、タルシシオ・フレイタス・インフラ相の2人と一緒の写真も載せて、連帯の強さを強調しようとした。
歳出上限に関してはゲデス氏が最も強く主張していることであり、それが崩されれば辞任も考えられているほど不可侵な領域となっている。
というのも、新自由主義経済のシカゴ学派の学者であるゲデス氏が元々目指していたのは「できることは民間にやらせる」「小さな政府」であり、現在のようにコロナ対策で極大化した国家財政とは本来、対極的と言われている。次々に主要スタッフが離脱する流れの中で「次はゲデス本人か」とコメントする経済評論家まで現れている。
セルジオ・モロ法相が去った現在、連邦政府で最も人気のある閣僚であり、ボルソナロ政権にとって不可欠な存在となっている。