ホーム | ブラジル国内ニュース | ≪ブラジル≫自粛期間に個人投資家90万人激増=低金利嫌い、リスクをとって株式へ=「経済成長なければツケ払うことに」

≪ブラジル≫自粛期間に個人投資家90万人激増=低金利嫌い、リスクをとって株式へ=「経済成長なければツケ払うことに」

2015年当時のBM&FBovespaの様子(Foto: Rafael Matsunaga/ (Arquivo) – Wikipédia )

 国内個人投資家はこの10年間、ほぼ約50万人前後で推移していたが、ブラジル証券取引所(B3)は昨年7月に100万の大台を突破した。その後も個人投資家の数は増え続け、新型コロナウイルスによる自粛期間中にその動きは激増し、この3月から7月だけで90万人の新規口座が開設され、合計数は300万を目前にするまでに至ったと15付エスタード紙が報じた。
 B3は「Brasil、 Bolsa(株式)、 Balcão(カウンター) 」の頭文字の略で、ブラジル証券取引所を意味する。ブラジル最大級だった2大金融取引会社BM&FBovespaとCetipが 2017年に合併し、130億ドルの市場規模を持つB3が誕生、世界5位の金融取引市場となった。
 今回、国内個人投資家が大挙してB3に参入したことにより、感染拡大後に外国人投資家が金融市場から引き出した450億レアルの一部を埋め合わせることができた。コロナ危機によりボベスパ指数(Ibovespa) は3~4月に60%もの大暴落を記録したが、わずか数カ月でボペスパ指数を10万ポイントのレベルに持ち直すことができたのも、一部は国内投資家のお陰だ。
 ブローカー、マネージャー、証券取引所が見るところでは、個人投資家が激増した主因は経済基本金利(Selic)の低下だ。史上最低水準の年率2%は、伝統的な投資形態(Renda Fixa=国債やCDBなど)の収益性を低下させ、国内個人投資家がより高いリターンを求めてリスクを取るように促した。
 同時に、投資家のプロフィールも若者に変化してきている。より長期的な目標を持ち、ツイッターなど利用した会員制SNSや、投資指南をするユーチューバーなどのインフルエンサーが幅を利かせるようになった。
 B3によると、2016年から個人投資家の取引参加率は17%から21%に増加した。同時期に外国人投資家は10ポイント減少して、現在の46%になった。残りは年金基金などの機関投資家で構成されているという。
 現在、証券取引所の個人投資家の10分の6は16~45歳で、この年齢層は4年前は21%だった。彼らはB3が預かる資産3820億レアルのほぼ4分の1(1千億レアル)を占め、16年当時の個人投資家の投資資金の6倍になっている。
 株式市場だけでなく、投資分野にも新しいプロフィールを持つものが多くなった。サンパウロのITアナリストのセザール・ラウリア氏(25)のような人々は感染拡大が始まるまで、お金を節約する習慣すらなかった。社会的隔離で家に閉じこめられた時、どうすればより良い資産運用ができるか考え、投資計画を研究する時間を見つけた。

 彼は、ここ数カ月で給料の3割を株式投資につぎ込み、「この方法でもお金を貯められることを知り、ヒントを得るためにネット上のインフルエンサーをいくつかフォローするようになった」と語る。「私はすでに株式市場に1万レアル以上を投資している」と話すラウリア氏は、ブローカーのウェブサイトを通じて売買注文を出すことに難しさを感じていない。安全だが低利な国債購入は選択肢にないという。
 ラウリア氏と同様に、30歳のソフトウェアエンジニアのイザドラ・マセイオ氏は、ここ数カ月で株式市場への投資を開始した。「借金問題を抱えていたが、5年前にカードを解約して整理した。それから、いろいろな報道を読み、金融の解説をするユーチューバーをフォローして勉強していたが、4月に初めて株を実際に購入した」という。
 同氏は、給料の15%を株式、株式ファンドに投資する傍ら、住宅ローン債権(LCI)やアグリビジネス債権(LCA)などの保守的な商品にも一定割合を割くなど、バランスよく投資するよう心がけている。
 イタウ銀行の投資ディレクターであるクラウジオ・サンチェス氏によると、Selic の一連の削減は「迷子の投資家を生み出した」という。株式購入に踏み切れない投資家たちだ。Selicが高金利だった時代は、常にCDBやDIフンドに投資して高い利子を享受できていたが、今はゼロ金利時代に入ったことで、どうしていいか分からない“迷子”が生まれているという。
 同氏は「株式市場に新しく参入しているクライアントは若い。けっして過激ではなく、デイトレードで毎日こまめに売買をするのが好きな傾向がある。彼らは投資についてあまり教育を受けていないが、変動利子が魅力的な選択肢であることを理解している」と説明する。
 2000年代初頭に株式市場再編を担当したMBアソシアードス社のエコノミスト、ジョゼ・ロベルト・メンドンサ・デ・バロス氏は、新しい投資家の到来を肯定的に捉えている。「それが問題だとは思えない。株式市場はそのために存在している」とすら話す。
 ただし、今後数年間のブラジル経済の低成長により、短期的・中期的に投資家が逃避する可能性があると見ている。「最近参入した200万人以上の個人投資家はまだ、本当の試練を直面していない。なぜなら3月、4月は株価暴落したが、すぐに持ち直して10万ポイントまで戻したからだ。新規投資家が残るかどうかの試練は、9月から本格的に始まる2021年度予算の議論のゴタゴタから始まる」と見ている。
 同氏はさらに、「政府が来年度予算で歳出上限を無視したら、国内総生産(GDP)が成長せず、株式市場は拡大しない。株式市場が強い価格変動に襲われるたびに、そのツケを払うのは個人投資家たちだ」と付け加えた。