トランプ米大統領の元首席戦略官、スティーヴ・バノン氏が20日、詐欺の疑いで逮捕された。同氏は世界各地で右派ポピュリズム政治運動を支援していることで知られ、ボルソナロ大統領一家との交流が深く、とりわけ三男エドゥアルド下議へ多大な影響力を持つことでも知られている。21日午後の時点で、ブラジルでは最も深い関係を持つと見られているボルソナロ家から、この逮捕に関しての目だったコメントは出されていない。21日付現地紙が報じている。
バノン氏が逮捕されたのは、米国とメキシコの間に壁を築くキャンペーン「ウィ・ビルド・ザ・ウォール」基金を、個人的に流用した容疑だ。本人はこの基金からの報酬を得ていないと主張しているが、ペーパー・カンパニーや非営利団体から、かなりの額の報酬を受けていた疑惑が報じられている。すでに500万ドルの保釈金を払って釈放されたが、国外逃亡の恐れからパスポート没収を求められている。
極右サイト「ブライトバート・ニュース」元運営者として知られ、16年の米国大統領選の際に参謀役を務め「影の支配者」とまで呼ばれて注目を浴びた。トランプ政権の首席戦略官として入閣したが、トランプ氏と仲違いし8カ月で解任された。
世界に右派ポピュリズム政治運動を広げてきたバノン氏だが、南米で白羽の矢を立てたのはボルソナロ氏だった。ブラジル大統領選の2カ月前、18年8月にバノン氏は大統領三男エドゥアルド氏と直接対面。その際、エドゥアルド氏は「バノン氏から大統領選での支援を約束してもらった」とネット上で報告をし、父ボルソナロ氏は激戦を制して実際に当選した。
その後、19年1月、エドゥアルド氏は「バノン氏からラ米の右派拡大運動のリーダーにしてもらった」との投稿を行い、3月にはボルソナロ大統領の初訪米に際して、下議の身で訪米チームに加わり、バノン氏も晩餐会に参加して大統領の横に座り話題となった。
こうした経緯もあり、ボルソナロ大統領はエドゥアルド氏を米国大使に指名した。バノン氏をはじめとする米国の極右勢力との結びつきを強固にする目的ではないかとの憶測もあがったが、エドゥアルド氏の外交経験のなさや英語能力が疑問視され、上院が査問を渋ったまま立ち消えとなった。
その後バノン氏は、「スリーピング・ジャイアンツ」をはじめとする団体による、極右関係者に協賛する企業へのボイコット運動で大損害を受けたことなどが報じられていた。
エドゥアルド氏はフェイクニュース拡散部隊疑惑の中心人物と見られており、捜査の展開次第では、18年大統領選時からのSNS虚報戦略におけるバノン氏との知られざる関係が明らかにされる可能性がある。