ホーム | 連載 | 「でも、ブラジルは良い国!」 | 「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子=<第14回>=伯人はこの国の良さ分かってない

「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子=<第14回>=伯人はこの国の良さ分かってない

カルロスさんとパートナーのマリフェルさん

カルロスさんとパートナーのマリフェルさん

――ブラジルでの生活と本国の良かった時を比べて、良いと感じること、悪いと感じることは何ですか?
【カルロス】ベネズエラとブラジルを比較すると、政治と社会について言えば、ほぼ同じ構造です。ブラジルで常に気がかりなことの一つは、残念ながらブラジル人がとても不満を言うことです。
 多くの人がまだブラジルの持つ価値を理解していません。私はこんなことを尋ねるブラジル人に出会いました。「ブラジル人であることを恥じる人々がいる世界最悪のブラジルを、どうして選んだのですか?」と。
 ブラジルは素晴らしい国なので、彼の質問にとてもショックを受けました。私たちはスイスにはいませんが、ベネズエラにはないものや、良い状況があり、とても豊かな国であることを考えなければなりません。
 ですから、このブラジル人は価値を下げ過ぎだし、不満を言い過ぎだと思います。主張するのは自らの権利と義務を守るのに良いと思いますが、少し大げさであると思います。
 ベネズエラに戻れば、スーパーに入るまで5時間待たなければなりません。列に並び、番号を腕に付けて、商品を手に取ります。だから、私が最も印象に残っているのは、ブラジル人は自分の国を尊重していないということです。
 ブラジル人は恥じていますが、そうあるべきではありません。ラテンアメリカの多くの国はブラジルにあるものを持っていません。それはブラジルの人々であり、石油や経済。ブラジルは豊かな国なのに、残念ながら、人々は自分の手元にあるものをどう評価するかを分かっていません。今日、物事に価値を見出さないブラジル人が多いように思います。

NGOのセスタ・バジカ配布のプロジェクトを進めるアブドゥルさん

NGOのセスタ・バジカ配布のプロジェクトを進めるアブドゥルさん

【アブドゥル】まず、民主主義。ブラジルでは意見が言えます。シリアは独裁政権で、政治的意見を表明すれば死刑です。ここブラジルでは意見を言う事ができます。私の政治的意見を表明することができます。
 また、シリアでは金融市場と富が政府に集中しています。ブラジルでは、市場がより開かれています。市場は自由です。国の富に関して、すべてのセクターを政府が完全に支配しているわけではありません。ですから、ここブラジルでは、戦う人は無限に成長することができます。シリアでは、あらゆる面で政府の干渉があります。 
 ブラジルのネガティブな点は、「宣言も登録もされていない戦争」があることです。例えば、ブラジルで亡くなっている人の数は、他国での戦争と比較しても、衝撃的な数値データがあります。暴力や強盗、その他あらゆる原因によって引き起こされている死者数。
 ここには「宣戦布告のない戦争」があると私の目には映ります。完全に安全な国ではないようです。ここは神だけです。私たちは天使と神に守られていなければ、ここの社会は危険なので死ぬでしょう。シリアではそのような攻撃はありませんでした。

アブドゥルさんが組織した多国籍の人々のショーイベント

アブドゥルさんが組織した多国籍の人々のショーイベント

 警察は非常に厳しいです。寒さと飢えで死ぬ人々もブラジルにはいます。コロナウイルスのせいではありません。私はこのようなことをシリアでは見ませんでした。シリアでは平和がないにも関わらず、寒さや飢餓、ホームレスで亡くなる人はいませんでした。
 もちろん、ブラジルのポジティブな面も感じています。ブラジルは多様な文化によって成り立っている国の一例です。自然も人間も動物も多様性に富んでいます。とても豊かな国です。
 今日、智子さんが日本語なまりのポルトガル語を話さなければ、ブラジルでは彼女が日本から来たことに誰も気づかないでしょう。彼女がブラジルで生まれた日本人女性であると思うでしょう。彼女になまりがあるので、ブラジルの人々は彼女が外国から来たことに気づきます。
 彼女の息子は完全にポルトガル語を話します。ブラジルでは彼はブラジル人だと言うでしょう。彼は日本人ではなく、ブラジル人です。私がアラブなまりで話すと、ブラジル人でないと言われるでしょう。それで外から来たと分かります。
 これがブラジルの美しさです。私が話さなければ、私がブラジル人でないことに気づきません。私がドイツに行けば、ドイツでは言われるでしょう。「この短くひげを生やした男はドイツ人ではない」と。私は青い目をした金髪ではありません。
 ここにブラジルの美しさがあります。美しさは、その多様性、豊かさ、その他多くの細部にわたるものです。とても愛すべき国です。ブラジルの人々は人をよく受け入れ、人と関わり合うのは簡単です。ヨーロッパ大陸や他の社会、日本人ともオープンに関係を持つことは困難ですが、ブラジルの人々は親しみやすいです。(続く)