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「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子=<第16回(最終回)>=難民の経験から学べること

NGOの事務所でジャンさん

NGOの事務所でジャンさん

【ジャン】私はブラジル人が好きです。ブラジル人は非常に好奇心旺盛で、質問するのを恥ずかしがりますが、たくさんのことを知りたがります。問題は、ブラジルの政治がブラジル人が理解しやすくなるのを望んでいないことです。
 移民や難民が苦しんでいるのは、国民の意志によるものではありません。国民に状況を説明しなければならないのは政府です。世界もそうですが、ブラジルではコミュニケーションの問題がとても深刻です。コミュニケーションが欠如しています。
 コンゴのことについては前回述べましたが、民主主義がなく、問題は個人主義の政治家たちにあります。彼らは大統領になったら、オーストラリアでビルを買いたいと思っています。彼らはコンゴで生まれ育ったのに、なぜコンゴで建物を購入しないのですか?
 オーストラリアで購入したいとはどういう意味ですか? それは彼らが非常に閉鎖的な人々であることを意味します。私たちは民主主義と独立の交渉に失敗しています。国民のことを考えない政治家がいます。彼が国民と言った時、それは彼の家族のことです。親族は皆海外に留学し、良い生活を送ります。しかし、国民は苦しんでいます。
 コンゴはとても豊かな国です。携帯電話を作るための原料であるコバルトは、コンゴから60%産出します。それなのに私たちが国を見た時、子供たちは勉強する学校がありません。日本のせいでコンゴはこのような目に遭っているのでしょうか?

2018年の難民サッカーワールドカップでサッカー日本代表元監督ジーコさんに大使を願い出たアブドゥルさん。ジーコさんは所有するサッカー施設を無償で貸し出した。

2018年の難民サッカーワールドカップでサッカー日本代表元監督ジーコさんに大使を願い出たアブドゥルさん。ジーコさんは所有するサッカー施設を無償で貸し出した。

 それはコンゴの政治家のためです。彼らは「子供たちは勉強しなければならない」という考えを持たなければなりません。彼らは国の富をどのように利用して人々を助け、人々に利益をもたらすかについて考えるべきです。
 日本も他の国々も、政治家は国の富を活用して、次世代にまで利益をもたらすことを考えたので、国は成長しました。しかし、アフリカの大統領たちは皆一掃されるべきだと思う大統領ばかりです。「なぜコンゴにメトロを作らないのか?」と考える新しい大統領に交代されるべきです。彼らがメトロを作らなければなりません。しかし、皆、富を自分の懐に入れて何もしようとしません。
    ☆
 全16回の『サンパウロ難民移民座談会』は、今回が最終回。
 日本から座談会に参加した永井康之さんは、「ジャンさんが難民の方の前に立ちはだかる一番の壁は偏見だと言われていましたが、日本のように異文化との交流に十分に慣れていない国における偏見は、ブラジルのように多くの移民で構成された国における偏見よりも、ずっと大きなものだと思います。今後日本に暮らす外国人の方がこのまま多くなっていくようであれば、それと共に難民の方々に対する理解も進んでいく可能性はあるのではないかと思います。日本がブラジルにおける日系社会の経験や、この30年の間にブラジルから日本に移住した方々との交流を糧として、こういった偏見をできるだけ小さくしていくことが、難民の受け入れや、より充実したサポートにつながっていくと思います」と感想を述べた。

オンライン座談会の様子

オンライン座談会の様子

 座談会のホストである大浦智子さんは、「今回の座談会に参加していただいた3人は、2年前に難民レポートのために最初は知り合いましたが、今は難民だとか出身国とかはすっかり忘れてサンパウロで一緒に生きるかけがえのない友人たちです。若いのに生死をさまよう状況をサバイバルして来た彼らだけに、本当の強さと思いやりを持っていてとても尊敬しています。彼らと出会えば、間違いなく人々が抱きがちな難民に対するイメージが揺るがされます」と語った。
 『サンパウロ難民移民座談会』をお読みいただき、ありがとうございました。(写真/大浦智子、アブドゥルバセット・ジャロール、カルロス・エスカローナ)