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《ブラジル》コロナ禍で広がる教育格差=870万人が遠隔授業不可

携帯電話やパソコンで遠隔授業にアクセスする生徒(Alvaro Henrique/Secretaria de Educacao)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、大半の学校では対面授業を中止した。多くの学校は遠隔授業を行っているが、その開始に手間取った自治体や学校が多い上、授業への参加率は地域や所得による格差が大きい。
 ブラジル地理統計院(IBGE)がコロナ禍の影響を調査するために行っている全国家庭サンプル調査コロナ版(Pnad covid 19)によると、7月の場合、遠隔授業に参加できない生徒や学生は、公立校の生徒らを中心に870万人いた。
 コロナ禍で公立校に移籍する私立校生が増えている事や、授業料割引や奨学金支給などの恩典を与えても生徒や学生を失う私立校が続出している事は周知の事実だ。
 他方、公立校には遠隔授業に参加できない生徒や学生が多いなどの問題もある。インターネット環境やコンピューターがないからだ。専門家は、公立校での遠隔授業への参加率は、システムの運営や習熟度の評価以前の問題だと指摘。この状態が長引けば中途退学者が出てくる可能性もある。
 7月に学校や大学の授業に参加した6~29歳の生徒や学生は、当該年齢の人口の58・7%相当の4530万人いた。その内の3260万人(72%)は遠隔授業に参加したが、19・1%は遠隔授業には参加していない。休暇で授業がなかった生徒や学生も8・9%いた。
 特に北部では、休暇ではないのに7月は何の活動もなかったという生徒が、小中学生で40%、高校生では約半数いた。他方、南部では、小中学生の91・7%、高校生も90%が遠隔授業に参加した。

 所得別に見ると、一人当たりの収入が最低賃金の半分以下の家庭では、24・2%の生徒や学生が遠隔授業に参加できずにいた。
 一方、一人当たりの収入が最低賃金の4倍以上の家庭では、遠隔授業に参加できない子供は9・5%だけだった。
 州や市では遠隔授業を行う資金や経験が不足しているところも多く、首都や州都でさえ、公立校での遠隔授業を35日以上行えなかったところが14市あった。多くの自治体は連邦政府がイニシアチブを取らないと苦言を呈している。教育省はそれに対し、義務教育の行政責任は州や市にあるという立場をとっている。
 サンパウロ州などはまだ、対面授業再開の時期を決めかねているが、アマゾナス州では既に、衛生管理や社会的な距離の確保を徹底し、対面授業を再開している。
 ただ、アマゾナス州では現場の教師からも感染者が多数出ている上、子供達にも無症状の感染者がいる可能性があるなど、授業再開を危ぶむ声も強い。現場の教師の中には、当面は遠隔授業のみか、遠隔授業と対面授業の両方を組み合わせた形態が続くと見る人も多い。
 国民の43・6%にあたる9200万人は必要な時以外の外出を控えており、4920万人はかなり厳密な外出自粛を実行していた。他方、2%にあたる410万人は外出自粛はしておらず、人との接触は減らしたが外出は続けていた人も6440万人(30・5%)いた。外出自粛に従った人は女性や高齢者、子供に多かった。
 IBGEによると、新型コロナへの感染検査を行った人は1330万人以上おり、2割が陽性だったという。検査実施率が高いのは連邦直轄区の16・7%で、アマパー州の11・0%やピアウイ州の10・5%がそれに続く。検査実施率が最も低いのはペルナンブコ州の4・1%で、ミナス州やパラナ州、リオ・グランデ・ド・スル州が4・5%で続いている。(8月21日付エスタード紙、8月31日付フォーリャ紙より)