安倍普三首相の辞任表明のニュースは日系人政治家の間でも大きな反響を呼んでいる。安倍首相が来伯した2014年には、日系諸団体で歓迎会が文協ビルで催され、日系人政治家30人が来伯を祝すために駆けつけた。
主だった日系政治家に総理辞任を惜しむ声を取材した。
当時の歓迎会に参加していた政治家のひとり、安部順二(あべ・じゅんじ)元連邦下議(MDB)は「日伯関係がやや低迷していた時期だったが訪問により関係が深まった」と振り返り、「日伯が親密になったのも安倍首相のおかげ」と称した。
さらに日本の首相で歴代最長となる在任日数にも触れ「政治家としてはもちろんのこと、人柄も大変尊敬しています」と語り「それだけに辞任は非常に残念です」と惜しむ。
また「ブラジルは安倍首相だけでなく日本政府にたくさんの借りがあります」とし、チエテ川改修事業やグアナバラ湾清掃計画、サンタカタリーナ州サンジョアキンのリンゴ栽培への支援など例をあげ、「大きな恩恵を受けている」と日本政府に対しての感謝を表した。
現役連邦下院議員の西森ルイス下議は辞任をなげきつつも「健康は最も大事な財産です。正しい判断」と肯定。西森下議は2016年のテメル大統領訪日の際にも同行しており「非常に堅実な人柄で最高の印象をうけました」と何度かの会談を通しての印象を振り返った。
「日系諸団体によるブラジル内の日本文化保存普及活動への要請も迅速に対応して頂いた」と日系社会への対応のほか、「ブラジルとの経済的政策について友好的な姿勢を示してくれました」とし、日伯間の自由貿易協定や豚肉・牛肉・魚・果物の貿易取引について挙げる。
「ブラジルとの素晴らしいパートナーシップだけでなく、欧米諸国との外交で対話の機会を広げた」ことから「世界の中でも重要なリーダーであった」と力強く賛辞を送った。
「来日時、四世ビザ緩和について会談した際、ブラジルに対して特別な愛情を示してくれたように思えます。」――同じく16年の訪日に同行した元下議で現在はサンパウロ州商業評議会(JUCESP)の飯星ワルテル会長は下議時代特に注力していた「四世ビザ」について振りかえった。
「安倍首相の支援がなければ議論すらされなかったかもしれない」と振り返り、中南米対日理解促進交流プログラム〝JUNTOS〟などの「若者向けの奨学金プログラムが再開されたのも安倍首相を通してです」と強調した。
「小泉純一郎前首相もカリスマ性の高い首相でしたが安倍首相も、我々からすれば〝ムイント(とても)カリスマ〟でした」と評した。