オックスフォード大学が開発中の新型コロナ予防接種ワクチンの治験一時中断が関係者の間で懸念を生じさせた一方で、ブラジルではコロナ感染を怖れてか、子供の予防接種実施率が大幅に低下。病気再燃の危険性拡大などの問題が起きている。
9日付G1サイトが報じた、リオ州の麻疹(はしか)患者急増はその一例だ。同州では1~8月に1276人の患者発生が確認された。昨年同期は527人だから、今年は2・5倍近い。
感染症専門医は、理由として予防接種の実施率低下を挙げた。予防接種実施率低下は2016年から起きているが、麻疹の予防接種の必要性を説かない欧州からの旅行者やベネズエラ人難民の流入が感染拡大に輪をかけたという。
新型コロナの感染拡大も実施率低下に影響しているという。5月11日付フォーリャ紙も、麻疹患者が増えているが、コロナ感染への懸念が集団接種を困難にしていると報じた。予防接種の実施率低下は麻疹だけに限らない。
8日付現地紙や同サイトによると、7日現在の子供向けの予防接種実施率は51・6%で、約半数の子供が指定された予防接種を受けていないという。子供向けの予防接種の目標は最低60%だが、抗体ができ難い人を守るには90~95%への実施が理想だ。
今年の子供向けの予防接種実施率を種類別に見ると、麻疹と風疹、おたふく風邪の3種混合(SCR、triplice viral)は1回目58・89%、2回目46・66%で、新型コロナの感染防止に役立つといわれるBCGも53・06%など、いずれも60%以下だ。SCRに水痘(水疱瘡)を加えたテトラ・ヴィラル(SCR-V)に至っては19・95%だった。
ただ、予防接種実施率は2019年も良好ではなかった。1歳未満の子供が受けるべき予防接種9種はどれも理想値以下で、今世紀初の不名誉な結果となった。
最高は、麻疹患者急増で死者も出、大人も含むキャンペーンが行われたSCRの91・6%(理想値は95%)で、最低は、破傷風、百日咳、ジフテリアなどを防ぐペンタヴァレンテの69%だった。
18年は9種中3種が理想値に達したが、昨年は9種中8種で実施率が落ちた。近年増えた、予防接種に反対するキャンペーンも影響している。
ブラジル小児科学会は9日、このままでは疫病再燃の可能性があるとし、早急に対策を採るよう保健省に要請した。
なお、8月半ばの世論調査では、新型コロナ用のワクチンが出来たら予防接種を受けるという人は89%、受けないという人は9%だった。
8日に発表されたオックスフォード大学が開発中のワクチンの治験中断は、神経症状を呈した治験者がいた事がわかったためと説明された。7月に同様の例が起きて中断した時は、ワクチン接種との関係が否定され、治験が再開された。今回の治験者は既に退院した模様で、ワクチンとの関係が否定されれば治験再開となる見込みだ。