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《ブラジル》パンタナル=森林火災拡大で動物の墓場に=ジャガー生息地の州立公園65%焼失

マット・グロッソ州での森林火災(Mayke Toscano/Secom-MT)

 世界でも最大級の熱帯性湿地のパンタナルでの森林火災が一向に収まる気配を見せず、動物達の墓場と化していると13~15日付現地紙、サイトが報じている。
 ブラジル中西部のマット・グロッソ州からマット・グロッソ・ド・スル州にかけて広がり、ボリビアとパラグアイの一部にもまたがるパンタナル。ここは地球上の水循環を調べる水文学はもとより、地質、生態学の各側面で特異な性質を持つと認められる地域で、19万5千平方キロの内1878平方キロがユネスコ世界遺産に登録されている。
 パンタナル森林火災は7月半ばから絶え間なく続いており、煙や有害物質はブラジル南部や南東部でも確認されている。パラナ州クリチバで煙の臭いがするとか、最南端リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレで13日に黒い雨が降ったという報道はパンタナルでの火災の激しさを示す例だ。サンパウロ市の大気汚染も平年以上に悪化している。
 パンタナルは今、47年間で最大と言われるの干ばつに直面している。干ばつの影響は中西部だけでなく、南東部や北西部などでも出ているが、少雨と高温で湿度が極端に低くなっている上に、焼き畑などの人為的な要因が加われば、森林火災が止むはずがない。
 牧草地や分譲地にしようとして伐採・開発を行い、整地を容易にするために火を放つといった行為が繰り返されると、湿地帯であっても乾燥度が高まり、瞬く間に火が燃え広がるようになる。

広大な森林を焼失したマット・グロッソ・ド・スル州のセラ・ド・アモラル地区(IHP/DIvulgação)

 ここ数日は特に、燃え広がる火から逃げきれなかったワニや蛇、水牛といった動物達の黒焦げ死体の写真が報じられ、衝撃を与えている。
 世界でも有数のジャガー生息地であるマット・グロッソ州の州立エンコントロ・ダス・アグアス公園は、10万8千ヘクタールの総面積の内の64・8%を14日までに焼失。火傷を負ったジャガーを救出し、動物病院に運ぶ様子や、介護の甲斐もなく死亡したジャガーの姿も報じられている。
 マット・グロッソ州政府は5日、少なくとも二つの地域での森林火災は人為的なものとの見解を表明。同州サンロウレンソ川周辺では13日も、四つの先住民保護区の住人45人を避難させる作業が行われた。国立先住民保護財団(Funai)によると、同地域では10日程前に火災が発生。煙が立ち込めていた上、保護区にも火が及び始めていたという。避難したのは高齢者や子供、妊婦、出産後の女性など。火災に伴う先住民避難は初めてだ。

動物病院に運ばれる前に応急措置を受けるジャガー(Corpo de Bombeiros)

 マット・グロッソ州に先駆けて軍が派遣されていたマット・グロッソ・ド・スル州では、環境保護区も2万5千ヘクタールを焼失。保護区での火災は人為的なものと見た連邦警察は、責任者追及のためのマタター作戦を展開中だ。
 火災拡大を受け、連邦政府は14日、マット・グロッソ・ド・スル州は緊急事態にあると認識。リカルド・サレス環境相も15日、パンタナルでの火災は意図的なものである可能性をようやく認めた。