【既報関連】全国環境審議会(Conama)がマングローブの開発を規制する規定などを解除した9月28日、連邦検察庁が第一地域裁(TRF―1)にリカルド・サレス環境相の更迭を求めたと同日付現地サイトなどが報じた。
検察庁による環境相更迭請求は今回が初めてではなく、7月6日にも連邦直轄区連邦地裁に同様の請求を出している。だが、地裁での裁判が進まぬ内に事態は深刻化。新たな問題も生じているため、地域裁に控訴した。
7月の更迭請求は、サレス氏が環境保護のための種々の方策を解体、無効化しようとしており、行政上、不当な行為を繰り返し行っているという理由で出された。
サレス氏は当時、「検察の行動は政治的・思想的なもので、連邦政府の政策への介入だ」と決め付け、司法当局が受付を拒否した内容しか含んでいないとしていた。
しかし、法定アマゾンやパンタナルの森林火災は止むところを知らず、事態は悪化するばかり。国立宇宙研究所(Inpe)が発表する数字はアマゾンやパンタナルの火災増加を明確に示しているのに、連邦政府は数字を改ざんしている、気温上昇が招いたもの、先住民の焼畑が原因で農業生産者は無縁などとし、事実を否定している。
ボルソナロ大統領は国連演説でも、森林伐採や火災は減少などと、事実無根の主張を行った。
そこに輪をかけたのが9月28日のConamaの決定で、海岸部などにあるマングローブやレスティンガといった原生林の保護規定を解除したことだ。セメント製造に使う炉での有害廃棄物焼却も認め、灌漑事業用プロジェクト承認のための水や電力の消費の効率性に関する規定も解除された。
Conamaの構成員は昨年、議長のサレス氏によって大幅削減され、連邦政府の関係者や全国工業連合、全国農業連合などの民間部門が大半を占めるようになった。環境団体や検察の発言力が殺がれ、環境や人命を守るという視点が弱くなった事なども、今回の決定で如実になった。
検察庁は9月23日にも、サレス氏が環境相の立場にいる限り、法定アマゾンなどの環境破壊は進む一方とし、7月の要請を検討するよう裁判所に要請したが、それが効力を発する前にConamaの決定が行われたため、控訴となった。
検察庁は控訴に際し、「サレス氏が環境相に留まる事で、アマゾンの森林伐採に代表される環境破壊は悪化の一途を辿っている。これは、予算削減や、内部組織の不活性化、活動制限などで、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)をはじめとする監視機関が機能不全に陥ったりした結果だ」と説明。
サレス氏が環境保護のための国の組織を解体した点も、速やかに更迭すべき理由に挙げている。検察庁は18~19年のアマゾンでの森林伐採のデータなども添付し、速やかに決断しなければ、アマゾンは再生不能な状態に陥るとも主張した。
なお、9月28日のConamaの決定は、9月29日にリオ連邦地裁が、環境破壊が進み、再生不能な状態に陥るとの理由で差し止めている。