ホーム | コラム | 樹海 | 激震が止まらないリオ市長選

激震が止まらないリオ市長選

クリヴェラ氏(Tania Rego/Agencia Brasil)

クリヴェラ氏(Tania Rego/Agencia Brasil)

 9月も終わり、いよいよ10月。新型コロナウイルスで順延されたとはいえ、4年に一度の全国市長選が、そろそろ実感を伴って楽しみになってくる頃だ。
 サンパウロ市民としては、もちろんサンパウロ市市長選も気になるところ。だが、コラム子がもっとも気にしている市は、やはりリオだ。
 なぜか。それは、リオのここ数年の政治荒廃ぶりがあまりに見てられないからだ。いくら、世界的に悪名高い危険な大都会だとはいえ、それでもリオの政界の荒れっぷりを聞くと、誰もが衝撃を覚えずにはいられないはずだ。
 なにせ、リオ州だと、過去4人の知事が逮捕者となっている。アントニオ・ガロチーニョ、ロジーニャ・ガロチーニョ、セルジオ・カブラル、フェルナンド・ペゾン。いずれも汚職で逮捕だ。
 そんな政界腐敗を根絶するために、ボルソナロ大統領のお墨付きをもらう形で当選していたはずのウィルソン・ヴィッツェル知事も。保健局の贈収賄工作関与の疑惑で停職処分。無実だと養護してくれる勢力も皆無で、罷免はまず確実なものと見られている。
 そして、荒れているのは州だけにあらず。州都も火の車だ。
 現在の市長はマルセロ・クリヴェラ氏で、福音派のウニベルサル教会の牧師だ。2016年の選挙では、ファヴェーラからの支持の強い極左政党・社会主義自由党(PSOL)のマルセロ・フレイショ氏との争いに勝って市長に選ばれた。だが、そんな極端に二分化した市内をまとめるのは非常に難しく、世論調査でも低支持率の連続だった。
 そこに、クリヴェラ氏自身による不正疑惑が相次いで発覚した。ひとつは、自分の職員らに命じてマスコミ対策グループ「クリヴェラ親衛隊」を作り、不利な報道をしようとしたマスコミを妨害していた疑惑が報じられた。
 さらにそれ以上に問題となったのは、2018年、クリヴェラ氏が息子の下院議員選挙の応援のために、市のごみ処理公社の車を大量利用させたことが職権乱用に問われ、2026年までの選挙出馬禁止を、満場一致の判事票で下されている。現在は控訴審の段階なので、とりあえず出馬の夢は消えていないが、いつ失格になってもおかしくない。
 クリヴェラ氏は、ボルソナロ大統領一家の手厚い支持を受けながらも、現状の世論調査で2位。しかも1位のエドゥアルド・パエス元市長との差は10%以上も開いている。
 だが、そのパエス氏とて安泰でないところが頭の痛いところ。同氏もまた、収賄疑惑で選挙地裁で被告となっている。展開次第では同氏も裁判に問われて失格となる危険性がある。しかも、リオ五輪の利権を最大限に悪用したセルジオ・カブラル氏が知事の時代のリオ市長だ。疑われやすい条件も揃っている。
 そして、本来このチャンスに、当選の可能性が大きくなっていたはずの極左候補のフレイショ氏だが、なぜか今回は出馬していない。そういうことで、左派の間でも候補者を絞りきれない状況がある。今回の選挙でも、混乱が収まることはないのか。(陽)