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文協=ウェビナー「新しい日常」=東京とサンパウロ比較=コロナ対策互いに参考に

グラフで説明する岡部医師

グラフで説明する岡部医師

 ブラジル日本文化福祉協会(文協、石川レナト会長)は10月1日午前8時半から、『新しい日常:東京の取り組みサンパウロの取り組み』をテーマにウェビナーを開催した。「ブラジルの行政の進め方や国民の行動に少しでも参考になる機会となれば」と、在伯日本大使館(山田彰大使)、サンパウロ州政府、サンタクルス病院(石川レナト理事長)の協力により、日伯の感染症専門家が新型コロナウイルスを封じ込めるための方法や行動、そして今後重要になる〝新しい日常〟について解説していった。

 石川会長はあいさつで「ブラジルは今コロナウイルスの危機にさらされていますが、まだ世界でもその対処法を研究中です。でもブラジルは日系コミュニティーも含めて前進しなければなりません。この難局を乗り越えるために日伯の感染症専門家をお招きしました」と両国の専門家に謝辞を述べた。

挨拶する山田大使

挨拶する山田大使

 山田大使は 「日本の感染状況やこれまでの対応について、日本とブラジルがお互いの知見・経験を共有し合うことで、新しい日常へのよりよい道が見つかることを期待します」と述べ、日本から招いた2人の公衆衛生専門家を紹介した。

 日本側の岡部信彦医師は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員として日本政府に様々な提言・助言を行ってきた。岡部医師はスライドを使いながら、日本での主な新型コロナウイルスに関する出来事を時系列に並べ、感染者数等と照らし合わせながら日本政府が講じた対策や直面してきた問題について説明した。

岡部信彦医師

岡部信彦医師

 安倍首相が全国の小中高校に臨時休校要請の考えを公表した2月27日から感染者は増加したが、約1カ月半後には減少し、5月25日には緊急事態の解除が宣言された。7月と8月には再び感染者が急増したが、死亡者数は第一波の時よりも格段に少ないことなど、他にも興味深い現象を示した。
 国立国際医療研究センター長で、東京都の新型コロナウイルス対策に関するアドバイザーを務めている大曲貴夫(おおまがりのりお)医師は、日本では新型コロナウイルスの予防や対策、緊急時の連絡先を記した市民向けのパンフレットが配布されていることや、日本政府が新型コロナウイルス接触確認アプリを推奨し、人口の半数に当たる約6千万人が既にインストールしていることなどに言及した。

歌舞伎の例を説明する大曲医師

歌舞伎の例を説明する大曲医師

 約5カ月間は休演していた日本文化を代表する歌舞伎座での対策も取り上げ、舞台の上で後方に並ぶ演奏者たちや小道具などを扱う後見たちが、特注の黒いマスクをつけ、普段よりも距離を開けて座っている事なども紹介した。
 ブラジルからはサンパウロ州の新型コロナウイルス感染症緊急対策委員会でコーディネーターを務めたダヴィ・ウィップ氏とサンタクルス病院の長谷川レナト医局長が参加。
 ウィップ氏は 「ブラジルは日本と違って中央政府が国全体をまとめようとせず、各自治体に新型コロナウイルスへの対策が委ねられている。政治的な問題が新型コロナウイルスでもブラジルの弱点となっている」
と示唆した。
 新型コロナウイルスの問題が発生した直後にドリア聖州知事は対策委員会を結成し、ウィップ医師たちは学校閉鎖やロックダウンなど迅速に決定を下してきた。そのため、大サンパウロ圏での新型コロナウイルスによる危機の回避は同州内でも高い効果を上げていることを強調した。
 大曲医師は長谷川医師にサンタクルス病院が他病院に比べて新型コロナウイルスの患者に良好な結果を出している理由について尋ね、病院での様々な工夫が効を奏していることを説明した。
 ウェビナーは引き続き文協の公式ユーチューブチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=4Y_cHa24s8I)で視聴できる。言語はポ語のみ。

□大耳小耳□関連コラム
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 『新しい日常:東京の取り組みサンパウロの取り組み』をテーマに開催された文協主催のウェビナー。参加者はポルトガル語か英語で話を進め、同時通訳付きでポルトガル語のみの実施。日伯を結ぶ有意義な企画でオンラインだからこそ日本の人にも世界各国の人々にも視聴される。ただし日伯交流に関わるイベントでなので、できれば日本語字幕はほしかったという一世からの声も聞かれた。