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《サンパウロ州》他人の牛救って大事なバイク失う=「必要なら同じ事繰り返す」

焼け尽くされたた畑や草むらの中に立つバイクの残骸(9日付G1サイトの記事の一部)

 サンパウロ州内陸部のミラソル市でバイク走行中、大規模な草むらの火災に気づき、農家が飼っている牛を逃がすのを手伝っている間に、唯一の移動手段のバイクを失った男性がいる。58歳のカルロス・ロベルト・ジョアキン氏だ。
 同氏は7日午後、ミラソル市とリオランジア市を結ぶ道路を走行中、大規模な火災に遭遇した。
 燃え盛る火の行く手に農家があるのに気づいたジョアキン氏は、何もためらわずに道端にバイクを止めて農家まで行き、牛を移動させるのを手伝った。
 幸い、牛は全て、無事に移動させる事が出来たが、ジョアキン氏がバイクを置いた場所に戻ってみると、道端の草に燃え広がった火がバイクも取り囲んでいたという。バイクにも火が及んでいるのを見たジョアキン氏は周囲の火を消そうとしたが、あっと言う間にバイクは残骸と化した。
 ジョアキン氏は8年前に事故に遭い、働けなくなった。事故の現場が川岸だったため、左足の複雑骨折と共に感染症を起こし、手足がこわばり、感覚がなくなるという後遺症が残ってしまったのだ。ジョアキン氏は退院後、左官としての仕事に戻ったが、後遺症のために仕事を続ける事が出来ず、やむなく離職した。

 現在は政府からの支援金を受け取り、知り合いが提供してくれた家に住んでいるが、その家は電気もない。足が不自由なため、自転車にも乗れないジョアキン氏は、働いていた時に苦労して買ったバイクを使い、食べ物や水を購入していた。今回の出来事でバイクを失い、水なども徒歩で買いに出なくてはならなくなった。バイクを買い替えたくても、家賃を払う金さえないからだ。
 だが、ジョアキン氏は自分がとった行動を悔いていない。むしろ、「同じ状況に置かれたら、同じ事を繰り返す」「唯一違うとしたら、バイクを別の場所に置く位だ」と何もはばからずに言う。
 消防によると、同地域の火災(焼き畑などによるもの)は1~8月に640件起きており、昨年同期の452件を41・5%上回っている。火災が増えたのは、高温や異常乾燥などとも関係があるが、火災の大半は収穫後の畑に火をかけたら燃え広がったなどで、避け得るものだという。
 7日午後に起き、ジョアキン氏がバイクを失った火災は、通報を受けた消防が、市役所のタンク車なども使用して消し止めたという。(9日付G1サイトより)