11月15日投開票でブラジル各市町村の首長と議会(議員)の選挙が行われます。
4年に1度の今回の選挙は、新型コロナウィルスのパンデミック下での選挙なので、集会などの選挙運動は行われず、従来と相当異なった選挙結果が出ると思われます。
私共に身近なサンパウロ市議会に絞って調べてみますと、55の議席に対して総勢2千人も立候補しています。これは前回比で競争率54%強のアップと大激戦の様相です。
家の前の道路や治安の整備、ゴミの収集はたまた税金の支払いなど、実は私たちの生活に一番かかわりの深い市、地域の政治。
ここでは先ず、サンパウロ市の日系社会を中心に状況をご報告致しましょう。
猫も杓子も議員様(?)
市議会55議席に2千人の候補者、36倍強の競争率とは、激戦ですね。何でこんなに多くの候補者が出るのか? 一寸様子を聞くと、こんなことが挙げられました。
★勤務であまり縛られない割に待遇が良い。一般の公務員よりも良い手当を受け、補佐官や車供与などの特別待遇が受けられる。それに本業と兼任でも出来るので、弁護士や医師など自由業の人にはもう一つの活動源となります。今までの職業を卒業した人達(年金受給者者)で、カオの売れてる人は「おいらも一寸やってみようか」と色気をだすことになります。
★ブラジルの選挙法は日本と異なり、議員の所属する政党の得票数により当選者が決まります。また、今回から規制が変わり、政党間の「選挙提携」が出来ないことになり、各党がなるべく沢山自党の候補者を立て、党としての総得票数を多くしようと努力します。
政党が23党あると各党の上限は83人まで、23党×83候補=1909人になります。
実際には「猫も杓子も」ではなくて、各政党で事前選考があり、最低でも一人1万票は期待されてる訳ですから、選ばれるのは年齢50歳台くらいを中心にした立派な人たちが選ばれる訳です。
しかし、ブラジル人は社交的で「俺は町中で一番、カオだと言われた男」と思って居る人が多いし、山っ気の多い人も沢山居るから、「宝くじに当たるより率は良いんじゃ」と思う人も多い。
周囲の情勢にこれらも影響して、今回は更に候補者が増えたのかも知れません。
サンパウロ市長は誰がなる
人口1千万人を超えるサンパウロ市は (1)ブラジル連邦 (2)サンパウロ州 に次ぐ、国内3番目の財政規模を誇る重要行政団体です。
そこの市長席は次のサンパウロ州知事、その後のブラジル大統領席につながる登竜門であり、重要ポストです。
あわせて選ばれる市議会議員の得票数にも大きく影響します。(日本で言えば首相と同じ自民党所属の人の方が実生活での政治面での力が強いのと同じことです)で、日系議員の話の前に一寸市長選の方をのぞいてみましょう。
市長には右派から左派まで計14人の候補者がいます。現在の世論調査では別表の3氏あたりが有力とされています。
(1)C・ルッソマノ氏=TVで司会をやっていたのでカオも名も売れています。ボルソナロ大統領の支持があるとしていて、現在は下院議員です。
(2)B・コーヴァス氏=現職の市長で再選を目指します。元サンパウロ州知事のM・コーヴァスの孫で知名度は抜群。但し、昨年消化器系のガンが見つかり目下執務、治療中。
(3)G・ボウロス氏=一貫して左派の重鎮で労働階級代表。PTのジルマール・タット候補の知名度が今一なので、左派の中では一番人気となっています。
日系人の候補者は20人。現在在職している日系議員が4人ですから、これも相当の激戦と考えられます。
(1)R・林・ゴラール=市南部で親の代から市政に関係しており、相当固い支持者層があると見られています。日系人と言うより、地元住民全般の支持期待でしょう。
(2)M・大田=元下議のケイコ夫人とのオシドリ政治家として知られています。サンパウロの治安、警備強化を看板に市東部の地元住民、沖縄系の支持を得ています。
(3)A・野村=父のD・野村元下議時代から日系社会では知名度が高いです。今回7選目を目指して、固い支持基盤を動員しています。
(4)G・羽藤=父、伯父など一族が政治家で医学界にも関わっています。若くてルックスも良いのでそれもプラス要因だと言われています。
以上4氏が現職で再選期待です。
(5)U・神谷=現職ではないが、長らく市議でしたので名前は売れている。市北部の基盤を元にリベンジ、捲土重来を期しています。
その他、学校の先生など優秀な方々が沢山居られますが、それはまた、次の機会に申し述べることに致しましょう。
党によってだいぶ数字は変わりますが、一般論で言えば3~4万票を獲得すれば、日系市会議員として栄えの栄冠を得ることが出来るでしょう。
こんなことで、今回の市首長、議員選挙では相当新しい風が吹く事が予想されます。
第一に、パンデミックの為に投票に行く人が減るのでないか? 殊に病気への抵抗力の低そうな高齢者の欠席や無効投票が予想されます。そのため、投票率も変わり、当選者の予測も中々難しいという事でしょう。
次に、外出自粛、集会制限の中で携帯電話、コンピューターなどのコミュニケーションツールを使った選挙運動が盛んになると思われます。
若い世代ではWhatsApp、フェイスブック、ツイッターなどのSNSや、ユーチューブなどを利用した宣伝や他候補への中傷が盛んになり、選挙結果に影響を及ぼすと思われます。
米国のトランプ、ブラジルのボルソナロ氏などもこの活用がその当選に大いに寄与したと言われていますね。
こうして旧い悪い慣習が除去され、ブラジル政界、議会にも新しい風が吹けば、私たちの住む社会もより良く、活動しやすくなることでしょう。
コロナ禍でよどんだ空気を一新する新しい風を噴き上げましょう。
(ご意見はこちら迄=hhkomagata@gmail.com )