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《ブラジル》最高裁判事が内部分裂?=仮釈放されたPCCリーダーが国外逃亡で=連邦議会でも法案論議再燃

(左から)マルコ・アウレリオ判事とルイス・フクス長官(Nelson Jr. e Carlos Humberto – STF)

 【既報関連】最高裁のマルコ・アウレリオ・メロ判事が州都第一コマンド(PCC)リーダーの仮釈放を認めた後、ルイス・フクス長官がその判断を覆す決定を下した事で、最高裁内の意見が割れ、14日に緊急審理が行われる事になった。新型コロナ感染症の感染回避のため、活動が止まっている下院の憲政委員会も、刑法関連の法案に関する論議再開の必要に迫られていると10~14日付現地紙、サイトが報じた。
 最高裁の内部分裂の発端は、アウレリオ判事が9日にアンドレ・デ・オリベイラ・マセドことアンドレ・ド・ラップ(以下Aラップ)への人身保護令適用を認めた事だ。
 Aラップは国内でも最も危険な麻薬密売者とされ、昨年9月にリオ州アングラ・ドス・レイスで逮捕されたが、10日午前中に仮釈放された。人身保護令適用は、結審前の犯罪者の長期勾留を避けるため、拘置は90日毎に正当化されなければならないという項目に沿う形で認められた。
 だが、Aラップは二つの裁判で第2審で有罪判決を受けたが控訴中で、一時逮捕扱いになっていた。また、釈放は検察の意見を求めずに決められた。このため、連邦検察庁は10日、Aラップには逃亡の可能性がある事や非常に危険な人物である事を理由に仮釈放差し止めを要請。フクス長官はこれを受け、仮釈放を差し止めた。
 Aラップはこの時点で国外に出ており、南米以外の国に逃亡する可能性があるため、国際警察の指名手配者リストに入れられた。フクス長官の警備も強化されている。
 最高裁内の意見の分裂は、2審後の刑執行に関する見解以上に、最高裁判事が下した判断を大法廷で審理せずに長官が覆した事が原因だ。
 フクス長官はアウレリオ判事の判断を差し止めると共に、PCCのような犯罪集団構成員や社会に危険を及ぼすと判断される人物への人身保護令適用は個人では判断しない事なども規定した。

 14日の全体審理ではフクス長官の仮釈放差し止めを認めた上、判事が個別に出した暫定令を自動的に全体審理にかける事(暫定令の全体審理義務化)や、長官に全ての判断を覆す権限を与えてしまわないようにする方策も話し合われる見込みだ。
 アウレリオ判事が判断の基としたのは、モロ前法相が提出した犯罪防止法案審議の際、連邦議会が加筆した項目で、モロ前法相が再考を求めていた。アウレリオ判事はこの項目を基に、79人の仮釈放を認めている。
 Aラップ釈放を求めたのは同判事の元側近の弁護士事務所の共同経営者で、同判事が関係を否定する場面もあった。
 アウレリオ判事に関しては2018年末も、第2審で有罪となって服役中の囚人を全て釈放する判断を下し、ジアス・トフォリ長官(当時)が差し止めた事もあった。
 なお、ロドリゴ・マイア下院議長は、連邦議会が加筆した項目が今回の問題を起こした背景にある事などを受け、第2審後の刑執行に関して下院で審議していた法案が承認されていれば今回の事例は防ぎ得たとし、法案の見直しと審議再開を進める意向を表明した。ただし、議会ではもう、セントロンを中心に第2審後の刑執行を妨げる動きが出ているという。