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《ブラジル》コロナワクチン=中国製除外は政治的な思惑?=保健省が来年4月からの接種発表

州保健局長らとのビデオカンファレンスに臨む保健省スタッフ(Erasmo Salomao/Ministerio da Saude)

 ブラジル保健省は14日、来年4月から新型コロナウイルス感染症に対する予防接種を開始と発表した。ところが、同省が対象とする予防接種ワクチンはオックスフォード大学が開発中のものだけだったため、州保健局長審議会(Conass)が国家衛生監督庁(Anvisa)が最初に承認したものを購入するよう要請したと14~16日付現地紙サイトが報じた。
 保健省は14日、オックスフォード大学とアストラゼネカ社が開発中で、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)を通じて最終段階の治験を進めているワクチンの接種を4月から始めると発表した。連邦政府は、オックスフォード大学が開発中のワクチンの治験とその後の生産計画に19億レアルの支援を決めている。
 だが、この発表はサンパウロ市ブタンタン研究所を軸に治験が進められている、中国製ワクチンの購入・生産に連邦政府も協力するようにとのサンパウロ州政府の要請を無視したものだ。
 中国製ワクチンはオックスフォード大学のワクチン同様、治験の最終段階にあり、その結果は19日に国家衛生監督庁に送付される予定だ。

 サンパウロ州のジョアン・ドリア知事は既に、年内に4600万回分のワクチンを受け取る事や、ブタンタン研究所で生産するための技術移転を行う事を盛り込んだ契約書に署名している。
 同知事は連邦政府にも、ブタンタン研究所のワクチン製造設備拡充や先の数以上のワクチン購入のための資金援助を要請していたが、保健省は希望額には到底及ばない額の支援を申し出るのみに終わった。
 中国製ワクチンの治験は他の州でも行われており、サンパウロ州など複数の州の保健局長は14日、中国製ワクチンも接種計画に含むよう要請。保健省には、「国家衛生監督庁の基準を満たし、最初に承認されたワクチンを購入するように」と求める局長審議会名の要請書が送付された。
 これらの動きを受け、保健省は15日、改めて「ブタンタン研究所が治験中のワクチンも候補の中に入っている」と発表したが、サンパウロ州政府が求めた支援に関する言及はなかった。
 ドリア州知事が反ボルソナロ大統領派の急先鋒であることから、今回のような連邦政府の冷淡な対応になっていると見るむきもある。一部の専門家は、政治的な要因で予防接種ワクチンの購入や生産が左右され、国民をコロナ禍から守るためのキャンペーンに支障が出る事を懸念している。