米国トランプ政権の使節団がブラジルに対し、ブラジルが来年予定しているインターネットの5G入札に関して中国のファーウェイ社を外すように迫るなど、アンチ中国的な姿勢を求め始めていると、20日付現地紙が報じている。
アンチ中国的な姿勢を最も前面に出してきたのは、17日付本紙でも報じた、ブラジルと米国の間の貿易協定締結のために来たトランプ政権の使節団を統括するロバート・オブライアン氏だ。
同氏を含む一行は、19、20日に米伯の貿易協定を締結するために来伯した。この協定そのものは、「貿易円滑化」「優れた規制の慣行」「汚職防止」を定めたもので、直接「反中国」を定めた内容ではない。
だが、フォーリャ紙によると、オブライアン氏の本来の使命は、ブラジル政府に対して、ファーウェイを5G事業から除外または制限するよう促すことだという。オブライアン氏は、トランプ大統領付の国家安全保障問題担当大統領補佐官だ。
米国は、ブラジルでの5G事業に「ファーウェイ」が参入するのを拒む理由として、「プライバシーの保護が保障されない」ことを挙げている。だが、その背後に米中貿易戦争、5Gの国際市場での競争があることは明白だ。最近ではイギリス政府がファーウェイの5G使用を行わないことを宣言して話題となったが、これに対してオブライアン氏は賛辞を送っている。
ブラジルでは来年、5G入札が行われることになっており、ファーウェイも参加の意向を示している。だが、米国としては同社の落札を是が非でも避けたいところだ。オブライアン氏は20日の貿易協定調印式に先立ち、ボルソナロ大統領やアウグスト・エレーノ安全保障室(GSI)長官と会談を行い、ファーウェイ参入を阻むべき理由を直接訴えた。
米国はブラジルの気をひくために19日、公的銀行DFCがブラジルに対して9億8400万ドルの貸付を行うことも発表している。これらの貸付はイタウ銀行やBTGパクトゥアル銀行などを通して小中規模の企業への融資に充てられる予定だ。
こうした米国の動きにファーウェイ側は不快感を示している。同社ブラジル支社のスン・バオチェン社長は「ファーウェイを外せば、ブラジルは高い代償を払うことになる」と警鐘を鳴らす。同社長によると、ファーウェイを事業から除外すれば、「全ての器材を交換する必要が生じるから、第5世代のコンピューターの本格導入には最低でも4年かかり、ブラジルのIT産業史上、最大の代償を払うことになる」と語っている。
だが、米国の西半球国家安全保障評議会(NSC)シニア・ディレクターのジョシュア・ホッジス氏はエスタード紙の取材に対し、「ファーウェイの代わりはあるし、米国はブラジルに財政面での支援を行う準備がある」と自信を見せている。同氏は「中国が香港に対してやったことを見てみろ」とし、ファーウェイは自分たちの事業を通して得たデータや技術を、利用者のためにではなく、中国を利するために使おうとしていると批判した。
ただ、テレーザ・クリスチナ農相をはじめとする農務省関係者やモウロン副大統領などは、ブラジルの主要貿易相手国である中国を敵に回せば、外交上、交易上の問題が生じるとして、ボルソナロ大統領らがどのような反応を表すかに神経を尖らせている。