世界中で持続可能性(サステナビリティ)を重視した車の製造が進められているが、ブラジルではトラック業界がこの分野をけん引している。
2年間のテスト期間を経て、21年3月から電気トラックを製造し始めるのはフォルクスワーゲンのトラック・バス部門(VWCO)だ。リオ州レゼンデの工場で、e‐デリヴァリーと命名されたトラックを100台製造するという。
国立モビリティファクトリー(FNM)も、11月にリオ・グランデ・ド・スル州カシアス・ド・スルで電気トラックの製造を始め、12月には最初の製品を納品する予定だ。スカニア社も天然ガスやバイオメタンを燃料とする製品を製造している。
VWCOのロベルト・コルテス社長によると、テスト車両はパイロット工場で製造しているが、電気車両製造用の生産ラインの導入は最終段階に入っているという。部品供給は、ディーゼル車用の部品を供給している8社が担当する。
最初に製造する100台は、飲料メーカーのAmbevが注文した。同社は23年までに1600台を購入する予定だ。VWCOでは来年6月から納品を始める意向だ。
電気トラック製造プロジェクトはもっと早い時期に稼働させるはずだったが、コロナ禍で遅れた。VWCOでは、将来的には南米やメキシコ、南アフリカへの輸出もと希望している。
e‐デリヴァリーはまず、Ambevが太陽光発電所を持つサンパウロ州やリオ州での配達に使用される。試算では、フル充電すれば200キロ走れるトラック100台で、二酸化炭素排出量を1540トン抑えられ、ディーゼル油も58万3千リットル節約できるという。VWCOによると、バッテリーは輸入品である事などから、電気トラックの価格は、従来機種(23万レアル)の2~2・8倍になるという。
コルテス氏によると、テスト走行時にかかった経費はディーゼル油を燃料とする従来種より60~70%安く済んでいるため、投資した分を取り戻すのは早いという。VWCOでは、持続可能性を追求した車の使用を促すため、税金引き下げなどの特別措置を受けられるよう、連邦政府との交渉を進めていく意向だ。
Ambevは、VWCOとの共同プロジェクトは世界的に見ても規模が大きく、歴史的なものと位置づけており、持続可能性を追求したトラック利用に関心のある企業には、いつでも喜んで、技術や経験を分かち合う意向を表明している。
創業40年のFNMは、マルコポーロ社元重役でFNM共同経営者の一人のジョゼ・アントニオ・フェルナンデス・マルティンス氏の息子二人の指揮下で、電気トラック製造に臨む。バッテリーなどの部品は米国から輸入する。
スカニア社は既に、天然ガスとバイオメタンを使ったトラックを50台販売している。バイオメタンの混入率によるが、汚染物質はディーゼル油を使うものより最大で90%減るという。(16日付エスタード紙より)