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《ブラジル》米国の5G中国排除問題で一部企業家が反発=中国外務省も苦言

貿易協定調印式で挨拶を交わすオブライアン氏(左)とボルソナロ大統領(Marcos Corrêa/PR)

 【既報関連】ブラジルとの貿易協定締結のために来伯していた米国側使節団が、第5世代(5G)のインターネットサービスの入札で、中国企業のファーウェイ除外を求めた件で、国内外から反発が起きていると21日付ブラジル国内紙、サイトが報じた。
 ブラジルとの貿易協定締結は大統領選挙を目前に控えたトランプ氏が外交面での実績を強調するための材料の一つといわれる。同使節団団長が、国家安全保障問題担当大統領補佐官のロバート・オブライアン氏というのは、尋常ではない力の入れようを示している。
 米国使節団は協定締結の手続きと並行した会合で、来年行われる5Gのインターネットサービスの入札でファーウェイを除外する事を要請し、同社を除外した場合に生じる経費負担を援助するための資金提供を申し入れた。
 元在米大使のルーベンス・バルボーザ氏や在米大使や財相経験者のルーベンス・リクペロ氏は、協約締結は表向きな理由で、ファーウェイ除外の要請とそのための資金提供が使節団の真の目的だったと見ている。
 アルマンド・アルヴァレス・ペンテアド財団のヴィニシウス・ロドリゲス・ヴィエイラ氏は、パンデミック後に広がった中国への嫌悪感や敵対心を煽るため、ラ米一の貿易相手国であるブラジルに圧力をかけている事を印象付けようとしたと見ている。
 米中貿易戦争が他国も巻き込んだ「冷戦」レベルに進む中、米国民の歓心を買おうとするトランプ氏が、米国が喜ぶ返答だけを繰り返しているボルソナロ政権を利用したと言えそうだ。

 一部の専門家は、5Gでの中国除外要請は、ブラジルと中国の間の貿易関係の破壊だけでなく、BRICSの解体や、エネルギーやインフラ部門への中国企業による投資打ち切りなどまで狙う行為と見ている。
 一連の動きに対し、ネストル・フォルステル在米大使は20日、国内需要や要求に応える事を第一とすべきで、ブラジルが5G入札でファーウェイを除外するかを決めるのは来年との見解を表明した。
 ブラジルの一部企業家らは、米国の要請を明確に拒否する事を避けたブラジル政府の姿勢を、匿名を条件に批判。主な言い分は、「中国はブラジル最大の貿易相手国だ。2番手の米国を喜ばせるために中国と喧嘩をするのは理不尽」「米国寄りの外交姿勢を示してきたのは確かだが、今回の要請を受け入れればどんな結果が生じるかはわかっている」「5G入札は技術面から判断すべき」などだ。
 「11月3日の大統領選の結果次第で状勢が変わり得るから現時点で結論を出すのは時期尚早」との声もある。ファーウェイや中国外務省は、「根拠もない中傷」「国際秩序を損ない、国際的な規範を脅かす行為」「政治的な関心重視で、冷戦下での交易という概念をすり込もうとした」と批判した。
 中国が仕掛けたコロナ禍がブラジルにも甚大な損害を与えているとの米国の主張に関して、中国側は「常にブラジルを助けようとしてきた」と弁明している。